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公正証書遺言、実際に作るとなると何をするのか?

公正証書遺言、実際に作るとなると何をするのか?

先日、40代の男性からこんな相談を受けました。

「父が『公正証書遺言を作ろうと思う』と言い出したんですが、何をどう手伝えばいいのか分かりません。公証役場に何度も行かされるんでしょうか。父は足腰が弱っていて、あまり外出させたくないんです。」

公正証書遺言という言葉は知っていても、実際にどんな流れで作られるのかは、意外と知られていません。制度の説明だけを読んでも、「結局、うちの場合はどうなるのか」はつかみにくいものです。今回は、実際に公正証書遺言を作成する現場に沿って、その流れをご紹介します。


最初の相談で、文章はまだ決めなくていい

事務所での最初の打合せでは、いきなり遺言の文章を仕上げるわけではありません。

まず聞かれるのは、家族構成と財産の内容、そして「誰に何を残したいか」という希望です。

「妻に自宅と預金の大半を残し、長男には別に用意した株式を」という方もいれば、「子どもたちに平等に分けたいが、長男には介護をしてもらった分を少し多く」という方もいます。

大事なのは、最初から完璧な答えを用意しておく必要はないということです。

「まだ迷っている」

という状態で相談に来る方がほとんどです。話しているうちに家族関係や財産が整理され、「それなら、こういう分け方もありますね」と選択肢が見えてくることもあります。


事務所に通う回数は、財産と家族関係の複雑さで変わる

冒頭の男性が気にしていた「何度も行かされるのか」という点です。

預金と自宅程度のシンプルな内容であれば、打合せの回数はそれほど増えません。一方で、不動産が複数の市町村にまたがっていたり、相続人が5人、6人といたり、前妻との間に子どもがいるといった事情があると、分け方を慎重に検討する必要が出てきて、打合せの回数も自然と増えていきます。

一度で決めてしまう必要はありません。

「持ち帰って、家族と相談してから決める」

という進め方もできます。公正証書として完成する前であれば、文案は何度でも見直せます。

「やっぱり、自宅は長男ではなく次男に残したい」

家族の状況を整理していく中で、当初の考えが変わることは珍しくありません。最終的な文案を確認してから作成日を迎えるので、急いで決めるより、納得できる内容になってから公証役場に向かうことが大切です。

ただし、いったん完成した後に内容を変えたくなった場合は話が別です。そのときは新たに遺言を作り直すことになり、当然その分の手数料も改めてかかります。「作成前は柔軟に直せるが、完成後は仕切り直し」という違いは、覚えておいて損はありません。


「付言事項」に何を書くか

公正証書遺言には、財産を誰にどう渡すかという本体の部分とは別に、「付言事項」という欄を設けられます。法的な効力はありませんが、なぜこの分け方にしたのかという本人の気持ちを書き残す部分です。

たとえば、長男に自宅を多く残す代わりに、次男は生命保険金の受取人に指定しておくケースでは、

「長男には長年、実家のことで世話になったため、自宅を長男に残します。次男にもこれまで支えてもらったことに感謝しています。兄弟で争うことなく、これからも仲良くしてほしい」

といった一文を添えると、財産の偏りに対する家族の受け止め方が変わることがあります。

ただし、付言事項はあくまで気持ちを伝える言葉であり、法的な拘束力はありません。遺留分侵害額請求のような法律上の権利を制限する効果はないので、その点を混同しないよう注意が必要です。それでも、本人の思いが言葉として残ることで、実際の争いを避けられるケースはあります。


公証役場での当日は、意外とあっさりしている

公証役場では、まず本人確認が行われます。その後、公証人が遺言の内容を遺言者本人に読み聞かせ、本人が「この内容で間違いない」と確認できれば、署名して手続きは完了です。以前は実印での押印が必要でしたが、今はタブレットに署名するだけで、証人2名も同様です。推定相続人やその配偶者は証人になれないため、証人が用意できない場合は事務所側で手配することもできます。

これで公正証書遺言が完成します。

作成当日に何時間も面接されるようなものではありません。内容はそれまでの打合せで固まっているので、当日は最終確認が中心です。


公証人って、怖い人なんですか?

「公証人」という響きから、堅苦しい人を想像する方もいますが、公証人の役目は、本人が遺言の内容を理解し、自分の意思で作成しているかを確認することです。「そんな分け方はダメだ」と説教される場ではありません。

内容について質問を受けることはありますが、それは公正証書遺言を適切な形で仕上げるためのものです。

ちなみに余談ですが、当事務所がよくお世話になる加古川公証役場の公証人の先生はとても優しくてきさくな先生です。


本人が公証役場に行くのは、基本的に作成当日だけ

司法書士に依頼した場合、最初の相談から文案調整までは司法書士が窓口になって公証人とやり取りを進めます。そのため、本人が何度も公証役場に足を運ぶわけではなく、通常は作成当日の一回で済みます。

冒頭の男性のお父さまのように外出の負担を減らしたい場合、この点は安心材料になるはずです。体調によっては、公証人が自宅や病院へ出向いて作成する「出張」という方法もあります。

なお、公証人手数料は財産の価額によって決まります。2025年10月に手数料令が改正され、以前より基本手数料と遺言加算が引き上げられました。目安として、自宅と預金を合わせて3000万円ほどを長男一人に相続させる内容であれば、基本手数料は2万6000円前後、これに財産総額が1億円以下の場合の遺言加算1万3000円が加わり、正本・謄本の発行費用を合わせると4万円前後になることが多いようです。ただし価額の区分や枚数によって変わるため、実際の金額は必ず公証役場で確認してください。


作成が終わったら、正本と謄本を受け取る

公正証書遺言が完成したら、そこで全部終わり、というわけではありません。

通常、公正証書遺言を作成すると、正本1通と謄本1通の交付を受けます。正本・謄本は、従来の紙だけでなく、電子データで交付される場合もあります。

「正本と謄本って何が違うの?」

という疑問もあると思います。

ざっくり言えば、正本は公正証書の内容を証明するもので、遺言執行などの手続きに使用することが予定されています。謄本は、公正証書の内容を記載した写しです。

では、受け取ったものをどう保管すればいいのでしょうか。

まず、なくしてしまっても、遺言そのものがなくなるわけではありません。

公正証書遺言の原本は公証役場側で保管されています。そのため、手元の正本や謄本を紛失したからといって、遺言そのものが消えてしまうわけではありません。

ただ、だからといって適当に保管してよいわけでもありません。

正本と謄本を同じ場所にまとめて置いてしまうと、その場所ごとなくしたときに、手元の書類を一度に失うことになります。

できれば、正本と謄本は別々の場所で保管するのがおすすめです。

さらに、信頼できる家族に謄本を渡しておく方法もあります。

せっかく公正証書遺言を作っても、本人しかその存在を知らなければ、亡くなった後に家族が遺言の存在に気づかないことがあります。

「公正証書遺言を作っていること」と「どこに保管しているか」を家族に伝えておくだけでも、相続が始まったときに動きやすくなります。

公正証書遺言は、原本が公証役場側で保管されるため、紛失や改ざんについては安心できる仕組みになっています。さらに、遺言の効力発生後には、相続人などの利害関係人が全国の公証役場で公正証書遺言の有無を検索することもできます。


作った後に、忘れずに考えておきたいこと

公正証書遺言は、完成すれば終わりというわけではありません。

財産の状況は年月とともに変わります。不動産を売却したり、新たに財産が増えたりすれば、遺言の内容と実際の財産にずれが出てくることもあります。数年に一度は、内容を見直す機会を持つとよいでしょう。

また、たとえば夫が先に亡くなり、その後に妻が亡くなる「二次相続」まで見据えて考えておくと、子どもたちの間で改めてもめる事態を防ぎやすくなります。夫の遺言だけでなく、妻自身の遺言もあわせて検討しておくご家庭は珍しくありません。


公正証書遺言というと、公証役場で作ることばかりが目立ちます。けれど、実際に時間を使うのは、その前の準備の方です。

本人が何を残したいのか。なぜそうしたいのか。家族に何を伝えたいのか。

そこを一緒に整理して、最後に公正証書という形にしていきます。「何から準備すればいいか分からない」という段階でまったく構いません。今の家族関係と財産、そして「こうしたい」という希望を聞かせてもらうところから、公正証書遺言の作成は始まります。

公正証書遺言を作りたいと思っても、「何を準備すればいいのか」「どんな内容にすればいいのか」と、最初からすべて分かっている必要はありません。

「父に遺言を作ってほしいけれど、どう進めればいいのか分からない」「公証役場に何度も行くのは難しい」「自分たちだけで文案を考えるのが不安」など、具体的な内容が決まっていない段階でもご相談いただけます。

当事務所では、ご家族の状況や財産の内容を確認しながら、どのような遺言にするのがよいかを一緒に整理し、公証役場との文案調整から作成当日までサポートしています。

公正証書遺言を作るかどうかも含めて相談したい、という段階でも大丈夫です。

高砂市・加古川市周辺で公正証書遺言をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

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