「司法書士の後藤です」と名乗っても、いまひとつ伝わらない。
名刺を渡したら、
「司法書士……?」
きょとんという顔をされる。
「何をする人なんですか?」
と聞かれる。
司法書士をしていると、そんな場面があります。
弁護士なら「裁判をする人」、税理士なら「税金の専門家」というイメージが浮かぶかもしれません。
では、司法書士は何をする人なのか。
実は、司法書士の仕事はかなり幅があります。
不動産の名義変更をする「登記」はもちろん、相続、相続放棄、遺言、成年後見、会社の登記、裁判、債務整理など、さまざまな法律手続きに関わっています。
「司法書士」という名前だけでは、何の仕事なのか分かりにくいですよね。
余談ですが、私もこの仕事を目指すまでは聞いたこともなかったです。
そこで今回は、司法書士が実際にどんな仕事をしているのか、身近な場面から紹介します。
不動産の名義変更をする
司法書士の仕事として、まず思い浮かぶのが不動産の登記です。
たとえば、
- 親が亡くなって家を相続した
- 土地を売買した
- 不動産を贈与した
- 住宅ローンを完済した
といった場合には、不動産の登記が必要になります。
司法書士は、必要な書類を確認し、権利関係を整理して、法務局への登記申請を行います。
特に相続登記では、亡くなった方の戸籍を確認して相続人を調査し、遺産分割協議の内容などを確認したうえで、誰が不動産を取得するのかを登記に反映させます。
単に申請書を書いて法務局に提出するだけではありません。
その前にある相続関係の調査や、必要書類の収集・作成まで含めて、登記を完成させるのが司法書士の仕事です。
相続の手続きをサポートする
司法書士に相談されることが多いのが相続です。
人が亡くなると、不動産だけでなく、預貯金や株式など、さまざまな財産について手続きが必要になります。
司法書士は、戸籍を集めて相続人を調査したり、遺産分割協議書を作成したり、不動産の相続登記をしたりと、相続に伴うさまざまな手続きをサポートします。
たとえば、
「父が亡くなったので、実家の名義を変更したい」
「兄弟で話し合った内容を遺産分割協議書にしたい」
「預金や株式の相続手続きもまとめて進めたい」
といった相談です。
相続では、一つの手続きだけで終わるとは限りません。
戸籍を集める。
相続人を確定する。
財産を確認する。
遺産分割について話し合う。
必要な書類を作る。
不動産や預貯金など、それぞれの名義変更を進める。
こうした手続きを順番に進めていきます。

相続放棄の手続きもサポートする
相続すると、預金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐことになります。
そこで、亡くなった方に借金があるなど、相続したくない事情がある場合には、相続放棄という選択肢があります。
相続放棄は、家庭裁判所に申述して行う手続きです。
司法書士は、相続放棄の申述書など、家庭裁判所に提出する書類の作成をサポートできます。
たとえば、
「亡くなった親に借金がある」
「疎遠だった親族が亡くなり、借金を相続したくない」
「相続放棄をしたいけれど、家庭裁判所に何を提出すればいいのか分からない」
といった相談です。
相続放棄には、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月という期間があります。
相続放棄をするかどうかを考えている段階から、司法書士に相談することができます。
相続登記の義務化で、司法書士に相談する人も増えた
2024年4月から、相続によって不動産を取得したことを知った相続人は、原則として3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。
これまで、
「親の家だけど、名義は祖父のまま」
「何代も前の人の名義になっている」
という不動産もありました。
相続登記の義務化によって、こうした不動産についても「そろそろ名義をきちんとしないといけない」と考える人が増え、司法書士への相談も増えています。
ところが、何代も前の相続になると、話は簡単ではありません。
亡くなった人の戸籍をたどって相続人を確認し、現在の相続関係を整理しなければなりません。
相続人が何十人にもなっていたり、遠方に住んでいたり、面識のない相続人が出てきたりすることもあります。
こうした複雑な相続関係を整理し、最終的に不動産の名義を現在の相続人へ移す。
ここでも司法書士が関わります。
遺言や生前対策を考える
司法書士の仕事は、亡くなった後の相続だけではありません。
元気なうちに、
「自分が亡くなったら、この財産を誰に渡したい」
「認知症になった後の財産管理が心配」
「家族にできるだけ負担をかけたくない」
といった将来の問題について相談を受けることもあります。
遺言書の作成や任意後見、家族信託など、その人の状況に応じた制度を検討します。
相続が始まってから手続きをするだけでなく、相続が始まる前に準備しておくことも司法書士の仕事です。
成年後見に関わる
判断能力が低下した方を支える成年後見制度も、司法書士が関わる分野です。
たとえば、
「親が認知症になり、預金の管理が難しくなった」
「施設に入ることになったが、本人に代わって契約できる人が必要になった」
といったケースです。
司法書士は、成年後見制度について相談を受けたり、家庭裁判所に提出する申立書類を作成したりします。
また、将来に備えて任意後見契約を検討することもあります。
成年後見は、本人の財産や生活を守るための制度です。
司法書士は、こうした本人や家族の法律上の手続きを支える役割も担っています。
裁判所に提出する書類を作成する
「司法書士って、裁判もするの?」
そう思われるかもしれません。
司法書士は、裁判所に提出する書類の作成も行っています。
たとえば、貸したお金を返してもらえない、家賃を払ってもらえない、相続をめぐって問題が起きている、といった民事トラブルです。
こうした場合に、訴状や答弁書、調停申立書など、裁判所に提出する書類を作成します。
さらに、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)であれば、簡易裁判所の事物管轄に属する民事事件について、一定の範囲で代理人として手続きを行うこともできます。
「裁判なら弁護士」というイメージが強いと思いますが、司法書士も裁判所に関わる仕事をしています。

会社の登記も司法書士の仕事
司法書士は、個人の相続だけを扱っているわけではありません。
会社を設立するときの登記や、役員変更、本店移転、商号変更、解散・清算など、会社に関する登記も司法書士の仕事です。
「会社を作りたい」
「社長が交代した」
「会社の本店を移転した」
といった場面で、司法書士が関わります。
会社は、設立して終わりではありません。
役員が変われば登記が必要になり、本店を移転すれば登記が必要になります。
会社の重要な情報を法務局の登記に反映させる。
これも司法書士の代表的な仕事です。
借金の問題を扱うこともある
司法書士の仕事には、債務整理もあります。
借金の返済が難しくなった場合に、任意整理、自己破産、個人再生などの手続きをサポートします。
任意整理については、認定司法書士であれば、一定の範囲で債権者との交渉や和解について代理することができます。
一方、自己破産や個人再生については、司法書士が裁判所に提出する申立書類を作成することで手続きをサポートします。
つまり、「債務整理」といっても、手続きによって司法書士の関わり方が違うということです。
司法書士は「登記をする人」だけではない
ここまで紹介したように、司法書士の仕事は不動産の登記だけではありません。
相続が発生すれば、相続人を調べたり、遺産分割協議書を作ったり、相続登記を進めたりします。
相続したくない事情があれば、相続放棄について家庭裁判所に提出する書類を作成します。
将来のことを考えるときには、遺言や任意後見、家族信託などについて相談を受けます。
判断能力が低下した方については、成年後見制度に関する手続きをサポートします。
会社を経営している方には、会社設立や役員変更などの登記があります。
裁判に関する書類を作成したり、認定司法書士として簡易裁判所の事件について代理人として関わったりすることもあります。
借金の問題では、任意整理や自己破産、個人再生などの手続きをサポートします。
こうして見ると、司法書士が関わる場面はかなり多いことが分かります。
では、結局のところ司法書士は何をする人なのか。
一言でいえば、法律のことで困ったときに相談できる、身近なまちの法律家です。
相続のこと。
家や土地のこと。
将来の財産管理のこと。
会社のこと。
裁判所に提出する書類のこと。
借金のこと。
「これって誰に相談したらいいんだろう」と思ったとき、司法書士が力になれることがあります。
もちろん、司法書士だけでは対応できない問題もあります。そのときは、弁護士や税理士など、別の専門家につなぐこともできます。
だから、「こんなことを相談していいのかな」と考えすぎる必要はありません。
まず話してみてください。
司法書士が対応できることなら、そのままお手伝いします。
別の専門家に相談したほうがいいことであれば、そのことをお伝えします。
司法書士は、登記だけをする人ではありません。
法律のことで困ったときに、まず相談してもらえる。
そんな身近な法律家でもあります。
「これ、司法書士に相談できるのかな?」
そう思ったときは、お気軽にご相談ください。