「父の家の名義を、母に変えたいんです」
そう言って相談に来られた方が、話の途中でふと、こう付け加えることがあります。
「あと、兄が『自分がもらう』と言って譲らなくて……」
このひとことで、実は相談先が二つに分かれます。
名義変更そのものは司法書士の仕事です。
でも「兄と話がまとまらない」という部分は、司法書士だけでは対応できません。
同じ相続の相談でも、**「手続きを進めたいのか」「相手と揉めているのか」**によって、頼るべき専門家が変わってきます。
今回は、その線引きを実際の場面に沿ってご説明します。
相続登記なら、司法書士
「父が亡くなったので、自宅を母の名義にしたい」
相続人の間で話し合いがまとまっていて、あとは名義を変えるだけ、という状態なら、司法書士の出番です。
戸籍を確認して相続人を確定し、遺産分割協議書などの書類を作成し、法務局へ登記を申請する。
これが司法書士の中心的な仕事です。
不動産の贈与や売買、住宅ローン完済にともなう抵当権抹消なども同じで、権利関係を登記簿に反映させる手続はすべて司法書士が扱います。
「揉めている」なら、弁護士
一方、先ほどの「兄が譲らない」というケースはどうでしょうか。
これは、登記の技術的な問題ではありません。
誰がその不動産を取得するのかについて、意見が対立しているという話です。
「遺産の分け方で話がまとまらない」
「遺留分を侵害されている」
「兄が遺産を使い込んでいるようだ」
こうした場面で、相手との交渉や訴訟の代理人になれるのは弁護士だけです。
たとえば、法定相続分より少ない財産しかもらえなかった相続人が、他の相続人に対して金銭の支払いを求める遺留分侵害額請求。
これは相手のある請求であり、金額の算定や交渉を伴います。
司法書士が「間に入って交渉する」ことはできません。
同じ「相続でもめている」という言葉でも、揉めている中身によって相談先が変わってくるのです。
相続放棄は、司法書士でも対応できる
「父に借金があったので、相続放棄をしたい」
というケースもあります。
相続放棄は家庭裁判所への申述であり、相手方との交渉ではありません。
そのため、申述書などの書類作成は司法書士でも対応できます。
ただし、相続放棄をした後に、債権者との間でやり取りが必要になり、それが訴訟にまで発展した場合は、また別の話になります。
「借金を相続したくない」という段階なら司法書士、「放棄した後に債権者ともめている」という段階になれば弁護士、という流れです。

遺言は、作る段階なら司法書士でも
「自宅は長男に、預貯金は妻に残したい」
これから遺言を作りたいという相談も、司法書士が対応できます。
希望を聞きながら、法的に有効な形になるよう文案を作成し、公正証書遺言であれば公証人とのやり取りも行います。
ここで誤解されやすいのが、「相続の話だから、遺言も弁護士でないと」と考えてしまうことです。
本人が自分の意思で遺言を残そうとしているだけであれば、争いはまだ存在していません。
争いが起きるのは、その遺言がすでにできあがった後です。
「この遺言は無効だ」「本人には判断能力がなかったはずだ」といった話が出てきて、はじめて弁護士の出番になります。
司法書士も、少額の裁判なら代理できる
「裁判は全部弁護士」というイメージを持たれている方も多いのですが、これも少し違います。
認定司法書士は、簡易裁判所が扱う事件のうち、請求額が140万円以下のものについて、代理人として交渉や訴訟に関わることができます。
140万円を超える請求や、地方裁判所が扱う事件については、司法書士が代理人になることはできません。
その場合でも、本人が自分で手続を進める本人訴訟のために、書類作成という形でサポートすることは可能です。
迷ったときの考え方
相談先を決めるときは、「相続だから弁護士」「不動産だから司法書士」と考えるより、
「今、自分は何をしてほしいのか」
で考えたほうが分かりやすくなります。
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 相続登記・贈与や売買の登記 | 司法書士 |
| 遺言書の作成 | 司法書士・弁護士 |
| 相続放棄の書類作成 | 司法書士・弁護士 |
| 相続人同士の交渉・遺留分の紛争 | 弁護士 |
| 遺言の有効性をめぐる紛争 | 弁護士 |
| 140万円以下の簡易裁判所事件 | 認定司法書士 |
| 地方裁判所の事件 | 弁護士 |
| 地方裁判所の事件等について本人訴訟をするための書類作成 | 司法書士 |
名義を変えたい、遺言を作りたい、放棄の書類を作りたい。
こうした「手続を進めたい」という段階なら、司法書士に相談できます。
相手と話がまとまらない、請求されている、遺言の有効性を争いたい。
こうした「争いになっている」段階なら、弁護士の出番です。
高砂市・加古川市で相続・遺言について相談するなら
相続の相談は、最初は単純な名義変更の話だったのに、途中から相続人同士の対立が見えてくることもあります。
後藤司法書士事務所では、高砂市・加古川市を中心に、相続登記、遺言書の作成、相続放棄などのご相談をお受けしています。
「これは司法書士に相談していいのか分からない」という段階でも構いません。
お話を伺ったうえで、司法書士が対応できる内容なのか、弁護士への相談が必要な内容なのかを含めてご説明します。
まずは、自分の問題がどちらに当たるのかを確認するところから始めてみてください。