「司法書士と行政書士って、何が違うんですか?」
これは、かなり聞かれる質問です。
確かに、分かりにくいですよね。私も最初はよくわかりませんでした。
名前も似ていますし、どちらも書類を扱います。
しかも、相続や遺言のように、両方が関わる分野もあります。
「じゃあ、相続のことなら、どちらに相談すればいいの?」
そう思うのも無理はありません。
実は、司法書士と行政書士は、仕事の範囲がそれぞれ違います。
そして、相続や遺言、会社の設立では、両方の専門家が関わることもあります。
今回は、その違いを具体的に見ていきます。
まず、司法書士は何をする人?
司法書士と聞いて、まず思い浮かぶのが「登記」です。
たとえば、
- 親が亡くなったので、家の名義を変えたい
- 土地を売ったので、名義を変更したい
- 不動産を贈与したので、登記をしたい
- 会社を設立したい
- 会社の役員が変わった
こうした場面で司法書士が関わります。
特に相続では、戸籍を集めて相続人を確認し、遺産分割協議の内容などを確認したうえで、不動産の名義を相続人へ変更します。
司法書士の仕事は登記だけではありません。
相続放棄など、家庭裁判所に提出する書類の作成や、成年後見に関する手続き、認定司法書士による一定の範囲の裁判や債務整理などもあります。
行政書士は何をする人?
では、行政書士は何をするのでしょうか。
行政書士の代表的な仕事は、官公署に提出する書類の作成や、その手続きに関する業務です。
たとえば、
- 建設業の許可
- 飲食店などの営業許可
- 産業廃棄物処理業の許可
- 在留資格に関する手続き
- 各種契約書などの作成
などがあります。
そして、行政書士も相続や遺言を扱います。
遺言書の作成支援や、遺産分割協議書などの相続関係書類の作成です。
ここが、司法書士と行政書士の違いを分かりにくくしているところです。
「相続なら司法書士」と、単純には分けられません。

では、登記は行政書士に頼める?
ここは、はっきりしています。
不動産の登記申請を、行政書士に依頼することはできません。
たとえば、
「父が亡くなったので、実家の名義を変更したい」
「土地を売ったので、買主に名義を変更したい」
という場合です。
こうした不動産の権利に関する登記申請を、依頼を受けて業として行うのは司法書士の仕事です。
資格のない者が、他人から依頼を受けて登記申請書を作成したり、登記申請を代理したりすることは、司法書士法で禁止されています。
これは、行政書士がどうこうという話ではありません。
司法書士と行政書士で、法律上担当できる仕事の範囲が違うということです。
行政書士に相続関係の書類を作成してもらうことはできます。
ただ、その後の相続登記まで行政書士に依頼することはできません。
登記については司法書士に依頼することになります。
相続では、どちらに相談すればいい?
たとえば、お父さまが亡くなったとします。
相続人は、長男と次男の2人。
話し合った結果、
「実家は長男が取得する」
と決まりました。
この話し合いの内容を、遺産分割協議書にします。
この遺産分割協議書の作成は、司法書士に相談することも、行政書士に相談することもできます。
そして、その後に、
「では、実家の名義を長男に変更しよう」
となれば、相続登記が必要になります。
ここは司法書士の仕事です。
つまり、
遺産分割協議書を作成することと、不動産の名義を変更することは、別の手続きです。
相続では、こうした手続きがいくつも重なります。
だからこそ、「相続だからこの資格」と一括りにするより、何をしてほしいのかで考えるほうが分かりやすいのです。
遺言は、司法書士にも行政書士にも相談できる
では、遺言はどうでしょうか。
これは、司法書士にも行政書士にも相談できます。
自筆証書遺言や公正証書遺言など、遺言書の作成について、それぞれの専門家がサポートしています。
たとえば、
「自宅は長男に残したい」
「預金は子どもたちで分けたい」
「相続人以外の人にも財産を残したい」
といった希望がある場合です。
遺言書を作ること自体は、司法書士でも行政書士でも相談できます。
ただ、その先まで考えると話が変わってくることがあります。
たとえば、
「遺言者が亡くなった後、この遺言を使って自宅の名義変更までしてほしい」
という場合。
不動産の相続登記は司法書士の仕事です。
ですから、遺言書の作成だけをお願いしたいのか、その後の相続手続きまで見据えて相談したいのか。
そこも、専門家を選ぶときのポイントになります。
相続放棄は、また別の話
相続放棄になると、相談先が変わります。
相続放棄は、家庭裁判所に申述して行う手続きです。
司法書士は、相続放棄の申述書など、裁判所に提出する書類を作成できます。
行政書士は、裁判所に提出する相続放棄の申述書を作成することはできません。
たとえば、
「亡くなった親に借金がある」
「疎遠だった親族が亡くなり、相続したくない」
といった場合です。
この場合は、司法書士や弁護士への相談を検討します。
相続放棄には、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期間があります。

会社のことでも、それぞれ役割が違う
司法書士と行政書士の違いは、会社に関する手続きでも分かります。
たとえば、
「会社を設立したい」
「役員が変わった」
「本店を移転した」
という場合。
会社の設立や役員変更、本店移転などの登記は司法書士の仕事です。
一方で、
「建設業の許可を取りたい」
「産業廃棄物処理業の許可を取りたい」
といった許認可は行政書士の分野です。
そして、会社を作るときに、いつもどちらか一方だけで済むとは限りません。
たとえば、建設業を始めるために会社を設立するのであれば、会社設立の登記は司法書士、建設業許可の手続きは行政書士という形で、それぞれの専門家が関わります。
私自身も、必要に応じて行政書士と連携して手続きを進めています。
一つの仕事を一人の専門家だけで全部やるのではなく、それぞれの専門分野を生かして一緒に進める。
こういうケースもあります。
司法書士と行政書士の違いを整理すると
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 不動産の相続登記 | 司法書士 |
| 不動産の売買・贈与による登記 | 司法書士 |
| 会社設立・役員変更などの登記 | 司法書士 |
| 相続放棄の申述書作成 | 司法書士・弁護士 |
| 建設業許可 | 行政書士 |
| 飲食店などの営業許可 | 行政書士 |
| 在留資格に関する手続き | 行政書士 |
| 遺言書の作成支援 | 司法書士・行政書士 |
| 遺産分割協議書の作成 | 司法書士・行政書士など |
このほか、相続税の申告なら税理士、相続人同士で争いになっているなら弁護士というように、別の専門家が必要になることもあります。
どちらに相談すればいいか分からないときは
ここまで読んでも、
「結局、自分の場合はどっち?」
と思うことがあるかもしれません。
それは珍しいことではありません。
相続や遺言では、一つの手続きだけで終わらないこともあります。
司法書士に相談したものの、
「これは行政書士にお願いしたほうがいいですね」
となることもあります。
逆に、行政書士に相談して、
「登記が必要になった」
という場合もあるでしょう。
その場合は、信頼できる行政書士をご紹介することもできます。
必要な手続きを整理して、それぞれの専門家につなぐ。
そのほうが、相談する方にとっても安心だと思っています。
「これは司法書士?それとも行政書士?」
そんなところからでも構いません。
高砂市・加古川市で、相続や遺言、不動産のことで相談先に迷ったら、まずはご相談ください。
司法書士が対応できることであれば、そのままお手伝いします。
行政書士など、別の専門家に相談したほうがいい内容であれば、適切な専門家をご紹介します。
一人で悩まず、まずはご相談ください。