「家族信託って、最近よく聞くけど、なぜ注目されているの?」
このようなご相談をいただく機会が増えています。
家族信託という制度自体は以前からありましたが、近年になって急速に利用が広がっています。その大きな理由の一つが、高齢化の進行と認知症による財産管理の問題です。
「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、将来、判断能力が低下すると、預貯金や不動産について思うように手続きができなくなることがあります。
今回は、家族信託が注目される背景と、「資産凍結」と呼ばれる問題について分かりやすく解説します。
認知症になると財産はどうなる?
認知症になったからといって、自動的に財産が使えなくなるわけではありません。
しかし、認知症が進行し、自分で契約内容を理解して判断することが難しくなると、新たな契約を結ぶことができなくなる可能性があります。
例えば、次のような場面です。
- 自宅を売却して介護費用に充てたい
- 賃貸アパートを建て替えたい
- 大規模な修繕工事をしたい
- 相続対策として不動産を整理したい
これらは本人の意思確認が必要となるため、判断能力が低下すると手続きを進めることが難しくなる場合があります。
銀行口座が使えなくなることも
「認知症になると銀行口座が凍結される」と聞いたことがある方もいるでしょう。
実際には、認知症になっただけで自動的に口座が凍結されるわけではありません。
一方で、金融機関が本人の判断能力の低下を把握した場合には、本人の財産を守るため、取引に制限がかかることがあります。
その結果、
- 多額の預金を引き出せない
- 定期預金を解約できない
- 新たな契約手続きができない
といった状況になることがあります。
家族であっても、本人名義の預貯金を自由に引き出せるわけではありません。
不動産も自由に売却できません
例えば、一人暮らしをしていた親が介護施設へ入所し、自宅が空き家になったケースを考えてみましょう。
「もう住まないから売却しよう」と考えても、本人に判断能力がなければ売買契約を結ぶことが難しくなります。
その結果、
- 固定資産税を払い続ける
- 空き家の管理を続けなければならない
- 建物の老朽化が進んでしまう
といった問題が起こることもあります。
介護費用のために売却したい場合でも、すぐに手続きを進められるとは限りません。
成年後見制度という選択肢
このような場合には、成年後見制度の利用を検討することになります。
成年後見制度は、判断能力が低下した方の権利や財産を守るための制度です。
そのため、制度の目的は「本人の保護」にあります。
財産を確実に守ることが最優先となるため、積極的な資産運用や相続対策を目的とした財産の組み替えなどは、基本的に想定されていません。
また、不動産の売却についても、その必要性を慎重に判断しながら進めることになります。状況によっては家庭裁判所の許可が必要になる場合もあり、家族の希望だけで自由に売却できるわけではありません。
これは成年後見制度が悪いということではなく、あくまで本人の財産を保護するという制度の目的によるものです。
家族信託なら柔軟な財産管理が可能
家族信託は、本人が元気なうちに契約を結んでおく制度です。
契約で定めた範囲内であれば、受託者は財産の管理や処分を行うことができます。
例えば、
- 賃貸不動産の管理
- 建物の修繕や建て替え
- 必要に応じた不動産の売却
- 信託財産の運用
なども、契約内容に基づいて行うことが可能です。
もちろん、受託者は自分の利益のために財産を使えるわけではありません。
信託財産は、受益者の利益のために管理・運用しなければならず、信託契約で定められた目的に従って管理する義務があります。
家族信託が注目される理由
家族信託が注目されている理由は、認知症になった後ではできることが限られてしまうからです。
元気なうちに将来を見据えた契約を結んでおけば、判断能力が低下した後も、契約内容に従って財産管理を続けることができます。
もちろん、家族信託は万能な制度ではありません。
財産の内容や家族構成によっては、
- 遺言
- 任意後見契約
- 成年後見制度
が適している場合もあります。
大切なのは、「家族信託が流行っているから利用する」のではなく、ご自身やご家族の状況に合った制度を選ぶことです。
まとめ
家族信託が注目されている背景には、高齢化の進行と認知症による財産管理の問題があります。
判断能力が低下してからでは、預貯金や不動産に関する手続きが思うように進まないことがあります。
成年後見制度は本人の保護を目的とした大切な制度ですが、積極的な財産の運用や処分には一定の制約があります。
一方、家族信託は、元気なうちに契約を結んでおくことで、契約内容に沿った柔軟な財産管理を実現できる可能性があります。
どの制度にもメリット・デメリットがあるため、それぞれの特徴を理解したうえで、自分や家族に合った方法を選ぶことが大切です。