「家族信託」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
新聞やテレビ、インターネットなどで見かけたことはあっても、「結局どんな制度なの?」「遺言とは何が違うの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
家族信託は、相続が始まった後の手続きではなく、将来に備えて元気なうちから準備しておくための制度です。
近年では、高齢化や認知症への備えとして注目されるようになり、多くの方が関心を持つようになりました。
今回は、家族信託の詳しい仕組みではなく、「そもそも家族信託とは何なのか」という基本的な考え方について、できるだけわかりやすくご紹介します。
家族信託とは?
家族信託を一言で表すと、
「信頼できる家族に財産の管理や運用を任せる仕組み」
です。
「任せる」と聞くと、自分の財産を家族にあげてしまうような印象を持つ方もいますが、そうではありません。
財産を誰のために使うのか、どのように管理するのかをあらかじめ決め、そのルールに沿って家族に管理してもらう仕組みです。
つまり、「もし将来、自分で財産を管理することが難しくなったらどうしよう」という不安に備えるための制度と言えます。
なぜ家族信託が注目されているのでしょうか?
家族信託が広く知られるようになった理由の一つが、認知症への備えです。
例えば、不動産を所有している方が認知症になり、自分で判断することが難しくなると、不動産の売却や活用が思うように進められないケースがあります。
預貯金についても、状況によっては手続きが複雑になり、ご家族が困ってしまうことがあります。
もちろん、すべてのケースで同じようになるわけではありませんが、「元気なうちに準備をしておけばよかった」と感じるご家族は少なくありません。
家族信託は、そのような将来の困りごとを減らすための選択肢の一つとして利用されています。
相続のためだけの制度ではありません
「家族信託は相続対策ですよね?」
このような質問をいただくことがあります。
もちろん、相続を見据えて利用されることもありますが、それだけではありません。
家族信託の大きな目的は、財産を将来も適切に管理できるようにすることです。
例えば、
- アパートなどの賃貸物件を所有している
- 遠方に住む親の財産管理が心配
- 子どもに少しずつ管理を引き継ぎたい
- 将来の認知症に備えておきたい
このような場合に活用されることがあります。
「亡くなった後」のためというより、「元気なうちから将来に備える制度」と考えるとイメージしやすいでしょう。
家族信託は万能ではありません
一方で、家族信託なら何でも解決できるというわけではありません。
状況によっては、遺言の方が適している場合もありますし、任意後見制度を利用した方がよいケースもあります。
また、家族信託は契約書を作れば終わりではなく、その後も信託の内容に沿って財産を管理していくことになります。
そのため、「家族信託が流行っているから」という理由だけで始めるのではなく、自分や家族の状況に合っているかを考えることが大切です。
家族信託を考え始めるタイミング
家族信託は、判断能力が十分にあるうちに準備する必要があります。
「まだ元気だから大丈夫。」
そう思っているうちに時間が過ぎてしまい、いざ必要になった頃には利用できなくなってしまうこともあります。
もちろん、急いで契約をする必要はありません。
しかし、早めに情報を集め、ご家族で話し合うことは決して早すぎることではありません。
将来の安心につながる準備として、一度考えてみる価値は十分にあります。
まずは家族信託を知ることから始めましょう
家族信託は、まだ比較的新しい制度ということもあり、「難しそう」「よく分からない」と感じる方が多い制度です。
しかし、その目的は決して難しいものではありません。
大切な財産を、自分や家族の希望に沿って将来も管理していくための仕組みです。
当事務所でも、「家族信託という言葉は聞いたことがあるけれど、自分に必要なのか分からない」というご相談を多くいただいています。
今後も、このブログでは、家族信託をはじめ任意後見や終活などについて、一つずつ分かりやすく解説していきます。
家族信託は、すべての方に必要な制度ではありません。しかし、ご家庭によっては将来の大きな安心につながることがあります。
「自分や家族の場合はどうなんだろう」と感じた方は、早い段階で情報を集めておくことをおすすめします。