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家族信託の受託者になったら何をする?具体的な義務と注意点を司法書士が解説

家族信託の受託者になったら何をする?具体的な義務と注意点を司法書士が解説

「親のお金を管理することになったけど、これで何か問題にならないだろうか」「自分が全部責任を負うことになるの?」「毎年何か報告しないといけないの?」「面倒な手続きがずっと続くんじゃないか」——家族信託で受託者になろうと考えている方から、こうした不安の声をよく聞きます。

受託者は単に財産を「預かる人」ではなく、法律上さまざまな義務を負う立場になります。とはいえ、内容を知らないまま漠然と不安になっているケースがほとんどです。今回は、受託者が果たすべき代表的な義務を、できるだけわかりやすく整理してみます。


そもそも受託者ってどんな立場?

家族信託では、財産を託す人(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分を任せ、その財産から生まれる利益は受益者(多くの場合は委託者本人や配偶者)が受け取る、という三者の関係で成り立っています。受託者は名義上の財産の管理者になるため、責任も相応に重くなります。信託法では、この責任を裏付けるかたちで、受託者にいくつかの義務を課しています。以下では、実務上とくに押さえておきたい代表的な義務を順番に見ていきます。


忠実義務:受益者の利益を最優先に

受託者には、善管注意義務と並んでもうひとつ重要な義務があります。それが忠実義務です。これは、受託者が自分自身や第三者の利益を優先せず、常に受益者の利益のために行動しなければならないというルールです。

たとえば、受託者が信託財産である不動産を、相場より著しく安い金額で自分自身に売却してしまう、あるいは自分の借金の担保として信託財産を勝手に使ってしまう——こうした行為は、たとえ悪意がなかったとしても忠実義務違反にあたる可能性があります。家族間の信託では「身内なのだから多少融通を利かせても大丈夫だろう」という感覚になりがちですが、受託者と受益者の利益が衝突する場面ほど、慎重な判断が求められます。信託契約であらかじめ利益相反となりうる行為の可否を定めておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。


善管注意義務:受託者という立場にふさわしい注意を払う

次に基本になるのが「善良な管理者の注意義務」、いわゆる善管注意義務です。これは、受託者という立場にある者として通常期待される注意を払って、財産を管理しなければならないというルールです。

「専門家並みの高度な管理を求められるのでは」と不安になる方もいますが、そこまで身構える必要はありません。たとえば普通の会社員が受託者になった場合、不動産投資のプロのような専門的な運用スキルまで求められるわけではなく、あくまで常識的な範囲で丁寧に財産を扱えば十分です。ポイントは、雑に扱ったり、私的な財産と混同して場当たり的に処理したりしないこと。不動産の修繕や賃貸借契約のように判断に迷う場面では、自己判断で進めず専門家に相談する、という姿勢を持っておけば大きな問題にはなりません。


分別管理義務:自分の財産と信託財産をきちんと分ける

次に大事なのが分別管理義務です。これは、受託者自身の固有の財産と、信託財産とを明確に分けて管理しなければならないというルールです。

具体的には、信託契約で管理を任された金銭は、受託者個人の口座ではなく、信託専用の口座(いわゆる「信託口口座」)を開設して管理するのが一般的です。不動産であれば、登記簿に「信託」の登記を入れることで、その財産が信託財産であることを対外的にも明確にします。これを怠って自分の生活費と信託財産を同じ財布で管理してしまうと、トラブルの原因になったり、税務上も説明がつきにくくなったりします。


帳簿等の作成・保存義務:記録を残すことが信頼の土台

受託者には、信託財産に関する帳簿その他の書類を作成する義務もあります。具体的には、財産目録や収支の記録を定期的に作成し、一定期間保存しておかなければなりません。

これは単なる事務作業ではなく、「受託者がきちんと財産を管理している」ということを客観的に示すための、とても重要な証拠になります。何年も経ってから「あのときのお金の流れはどうなっていたのか」と聞かれても、帳簿があればすぐに説明できますし、受託者自身を疑いから守ることにもつながります。

たとえば、信託財産から親の施設費や医療費を支払った場合や、実家の修繕費を支出した場合には、その都度、領収書や通帳の記録をきちんと残しておくことが大切です。「何にいくら使ったか」がひと目でわかるようにしておくだけで、後々の説明がぐっと楽になります。


受益者への報告義務:説明責任を果たす

そして、受託者は受益者に対して、信託事務の状況を報告する義務も負っています。信託法では最低でも年1回、貸借対照表や損益計算書に相当する書類を作成し、受益者に報告することが求められています。

家族間の信託では、つい「身内だから口頭で済ませればいいか」となりがちですが、書面で定期的に報告する習慣をつけておくことで、後々の「言った言わない」のトラブルを防ぐことができます。また、受益者が認知症などで判断能力が低下している場合は、後見人など代理で報告を受け取る人がいるケースもあるため、契約内容に応じた対応が必要です。


まとめ:義務は「縛り」ではなく「信頼の仕組み」

こうして見ると、受託者の義務はどれも「財産をきちんと、透明性を持って管理する」という一点に集約されます。面倒に感じられるかもしれませんが、これらのルールがあるからこそ、家族という近い関係だからこそ生まれやすい曖昧さやトラブルを防ぎ、託した側も託された側も安心して信託を続けることができるのです。

これから受託者になる方は、専門家(司法書士や弁護士など)に相談しながら、口座管理や帳簿の付け方といった実務の型を早めに整えておくと、その後の運用がぐっと楽になります。


もし義務を果たさなかったら?

最後に、これらの義務を怠った場合について触れておきます。受託者が善管注意義務や忠実義務に違反し、それによって信託財産に損害が生じた場合、受託者は損失をてん補する責任(損失てん補責任)を負う可能性があります。また、悪質なケースでは受益者や委託者から受託者の解任を求められることもあります。

とはいえ、家族信託の受託者の多くは、財産管理の専門家ではないごく普通の家族です。最初からすべてを完璧にこなす必要はありませんが、「何のためにこの義務があるのか」を理解し、迷ったときには専門家に相談する姿勢を持っておくことが、結果的に自分自身を守ることにもつながります。

当事務所では、家族信託契約の設計はもちろん、受託者になった後の口座管理や帳簿の付け方、報告書の作成方法についても継続的にサポートしております。「受託者になったけれど、具体的にどう進めればいいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。

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