家族信託を検討している方からよくいただく質問の一つが、「一度契約したら、もう内容を変更できないのですか?」というものです。
家族信託は、10年、20年と長期間にわたって続くことも珍しくありません。その間には、家族構成の変化や受託者の高齢化、財産状況の変化など、契約時には想定していなかった出来事が起こることもあります。
では、家族信託は途中で契約内容を変更したり、終了させたりすることはできるのでしょうか。
この記事では、家族信託の変更や終了について、法律上のルールや注意点を解説します。
家族信託は変更することができます
家族信託は、一度契約したら絶対に内容を変更できない制度ではありません。
信託法では、委託者・受託者・受益者の合意によって、信託の内容を変更できると定められています。
また、変更の内容によっては、受託者と受益者の合意で変更できる場合や、裁判所の関与が必要となる場合もあります。
ただし、委託者の判断能力が低下した後は、本人が変更について合意することが難しくなる可能性があります。
そのため、将来起こり得る状況を想定し、契約時から変更や見直しが必要になった場合の対応を考えておくことが大切です。
契約内容の見直しを検討するケース
家族信託では、次のような事情から契約内容の見直しを検討することがあります。
受託者を変更したい場合
受託者が高齢になったり、病気などで財産管理を続けることが難しくなったりすることがあります。
例えば、長男を受託者として家族信託を開始したものの、長男自身が病気になり管理を続けられなくなるケースです。
このような場合に備えて、契約時に後継受託者を定めておけば、将来受託者を変更する必要が生じた際にもスムーズに対応しやすくなります。
逆に、後継受託者について何も定めていない場合は、新たな受託者を決めるための手続きが必要になることがあります。
信託財産を追加したい場合
契約後に新たな財産を信託したいと考える場合があります。
例えば、
- 新たに相続や売買などで取得した不動産を信託財産に加えたい
- 預貯金を追加で信託したい
といったケースです。
信託財産を追加する場合には、契約内容や状況に応じて必要な手続きを行います。
家族や財産状況が変化した場合
契約時には想定していなかった事情の変化によって、契約内容の見直しが必要になることがあります。
例えば、
- 受益者や受託者の状況が変わった
- 家族関係に変化があった
- 財産の内容が大きく変わった
といった場合です。
家族信託は、ご家族の状況に合わせて設計する制度だからこそ、状況の変化に応じた見直しが重要になります。
家族信託が終了する主なケース
家族信託は、契約した後いつまでも続くものではありません。
法律上の終了事由や、契約書で定めた終了事由に該当した場合には、信託は終了します。
実際の家族信託では、契約時に「どのような場合に終了させるのか」をあらかじめ決めておくことが重要です。
契約書で定めた終了事由に該当した場合
家族信託では、あらかじめ契約書の中で終了条件を定めることができます。
例えば、
- 委託者が死亡した場合
- 一定期間が経過した場合
- 信託財産がなくなった場合
などです。
例えば、父親が認知症対策として自宅や預貯金を信託し、長男を受託者として財産管理を任せていたケースで、「父親が死亡した時点で信託を終了する」と契約で定めていた場合、その条件に従って信託は終了します。
終了後に残った財産を誰が取得するのかについても、契約時に定めておくことが大切です。
信託の目的を達成した場合
信託を設定した目的が達成され、信託を継続する必要がなくなった場合には、終了を検討することがあります。
例えば、「父親の介護費用を確保するため、預貯金を信託する」という目的で家族信託を設定し、その後、信託財産を使い切って管理する財産がなくなった場合などです。
また、自宅を信託財産としていた場合でも、単に売却しただけで終了するわけではありません。売却代金を引き続き信託財産として管理する必要がある場合は、信託は継続します。
法律上の終了事由に該当した場合
信託法では、一定の場合に信託が終了することも定められています。
例えば、信託の目的を達成できなくなった場合や、信託を継続することができない状態になった場合などです。
契約時の設計が重要です
家族信託では、「問題が起きてから考える」のではなく、契約時に将来の状況をできるだけ想定しておくことが重要です。
例えば、
- 後継受託者を決めておく
- 受託者が交代する場合の手続きを考えておく
- 信託財産を追加する場合の取扱いを決めておく
- 信託終了後に財産を誰が取得するのかを定めておく
といった内容です。
家族信託は契約書の自由度が高い制度ですが、その分、契約内容によって将来の手続きの進め方が大きく変わります。
変更や終了の際の注意点
家族信託の内容を変更したり終了したりする場合には、内容によって追加の手続きが必要になります。
例えば、不動産を信託財産としている場合には、信託登記の変更や抹消登記が必要になることがあります。
また、変更や終了の内容によっては税務上の問題が生じる可能性もあるため、必要に応じて税理士などの専門家への相談も検討しましょう。
まとめ
家族信託は、一度契約したら変更や終了ができない制度ではありません。
法律上のルールに従って内容を変更したり、契約で定めた条件や法律上の終了事由によって終了したりすることができます。
ただし、委託者の判断能力が低下した後では、本人の意思による変更が難しくなる場合があります。
そのため、家族信託を作成する際には、「今の状況」だけでなく「将来起こる可能性があること」まで考えた契約設計を行うことが大切です。
家族信託は契約して終わりではありません。将来にわたって安心して財産管理や承継を行うためには、ご家族の状況に合わせた丁寧な設計が重要です。