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成年後見制度と遺言はどう変わる?|2026年の法改正後も残る課題

成年後見制度と遺言はどう変わる?|2026年の法改正後も残る課題

2026年6月17日、成年後見制度の抜本的な見直しとデジタル遺言の創設を柱とする改正民法が成立しました。約25年ぶりの大改正です。「一度始めたら終われない」「使い勝手が悪い」。そう指摘され続けてきた成年後見制度の構造そのものに、ようやく手が入ります。

ただし、法律が変わったからといって、親の後見や遺言をめぐる不安がすべて解消されるわけではありません。施行後も、家庭が向き合わなければならない課題は残ります。


施行まではまだ数年ある

まず押さえておきたいのは、改正法はすでに成立・公布されたものの、実際に運用が始まるのは先だという点です。成年後見制度の見直しは遅くとも2028年12月24日までに施行される見込みです。つまり、これから2年から3年ほどは、現行制度のもとで手続きを進めることになります。

この間に親の判断能力が低下すれば、当然ながら現行制度で対応するしかありません。「もうすぐ制度が変わるから」と申立てや契約締結を先延ばしにするとどうなるか。判断能力がさらに低下し、任意後見契約はもちろん、法定後見の申立てすら、本人の意思確認の面で難しくなる可能性があります。

改正の内容を知っておくことと、今すぐ対応が必要かどうかは、分けて考えておきたいところです。


今すでに後見・保佐を使っている人はどうなるか

すでに後見や保佐を利用している人については、経過措置が設けられます。ここは誤解が生まれやすいところです。

改正法が施行されても、今の後見や保佐が自動的に補助へ変わるわけではありません。大きく分けると、次のような選択肢があります。

  • 現在の制度をそのまま利用し続ける
  • 要件を満たす場合、申立てによって現在の後見・保佐を終了させ、新しい補助の制度を利用する
  • 制度を利用する必要がなくなった場合、取消しを申し立てる

すでに補助を利用している人も同様に、改正後の補助の内容で利用を続けるか、申立てにより利用を終了するかを選べます。

何もしなければ不利益を受ける、という設計にはなっていません。ただ、実際にどのタイミングで申立てを行うべきか、費用や手続きの負担がどの程度になるかといった細部は、施行までの間に家庭裁判所の運用として積み上がっていきます。今、親に後見人がついている家庭は、まず選択肢があること自体を知っておき、施行が近づいたら具体的な進め方を確認してください。


デジタル遺言は誰でも手軽に使えるわけではない

デジタル遺言と聞くと、自宅でパソコンやスマートフォンから遺言書を作成し、署名するだけの手続きを想像しがちです。ただ、実際にはもう少し手順があります。

遺言書保管官の本人確認を受けたうえで、遺言書保管官の前で遺言の全文を口述する必要があります。電子データで作成する場合は、氏名の記録に加えて、署名に代わる措置も必要になる見込みです。それが電子署名になるのかどうかを含めた具体的な方式は、今後の法務省令で定められるとされています。従来の自筆証書遺言や公正証書遺言に比べて手軽になる面はあるものの、確認や本人確認の手続きが簡単になるわけではありません。

施行時期にも注意が必要です。遺言制度の見直しは、公布から1年以内に施行されるものと、システム改修を要するため3年以内とされるものに分かれます。押印廃止などは早期に実施される見通しですが、法務局への電子データ保管を伴う仕組みは、システム整備の関係もあり、公布の日から3年以内に施行されます。

当面は、自筆証書遺言や公正証書遺言といった従来の方式で準備を進める必要があります。「デジタル遺言ができるまで待とう」という判断は現実的ではありません。


改正後も残る、家族の疑問

制度の建て付けが変わっても、実際に家族が直面する疑問は形を変えて残ります。「制度がこう変わった」ということを知るだけでは、自分の家庭がどう対応すればよいかまでは見えてきません。今回の改正を知った後、多くの家庭が次に突き当たるのは、次のような点です。

  • 本人の判断能力が低下した後、実際に誰が財産管理を担うのか。家族の中で意見が割れた場合、最終的に決めるのは家庭裁判所です。
  • 裁判所の関与が必要な場面はどこまで残るのか。オーダーメイド型になっても、後見人の選任や交代の判断には裁判所が関わります。
  • 家族が希望する人が、必ず後見人になれるとは限りません。専門職が選ばれるケースは、改正後も一定数残ると見られます。
  • 判断能力が低下した後の本人の意思を、どう確認し反映させるのか。この難しさは、制度が変わっても解消されません。
  • 判断能力が低下する前に、成年後見以外の選択肢をどう準備しておくのか。
  • 制度を利用し始めた後、「やはり家族に任せたい」となった場合にどうするのか。交代のハードルが下がるとはいえ、希望通りに進むとは限りません。

今、子ども世代が考えること

制度は変わります。しかし、誰が財産管理を担うのか、本人の意思をどう反映するのか、家族の希望がそのまま通るのか。こうした問題は、今回の改正だけでは解決しません。

制度が変わっても、親の判断能力があるうちに家族として考え、動いておく必要があることは変わりません。

判断能力が低下する前に準備できる選択肢として、任意後見、家族信託、財産管理委任契約などがあります。ただし、それぞれ役割や効力が生じる時期は異なります。任意後見は、判断能力が低下した後に家庭裁判所が監督人を選んで契約の効力を発生させる制度です。家族信託は、本人の判断能力があるうちに、財産の管理・運用を家族などに託しておく仕組みです。本人の判断能力が低下した後も、信託契約の内容に従って財産管理を続けられる点に特徴があります。財産管理委任契約は、判断能力が低下する前の段階から財産管理を任せられる契約で、後見や信託と組み合わせて使われることもあります。

制度改正のニュースをきっかけに考えるべきなのは、「制度がどう変わったか」だけではありません。「自分の親の場合、どの選択肢が合うのか」。ここまで踏み込むことが、次の備えになります。

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