「ビットコインを持っているけど、自分が死んだら子どもに相続できるの?」
暗号資産を保有している方から、こんな疑問を持たれることがあります。
結論からいうと、暗号資産も相続財産です。
ただし、ここで一つ考えておきたいことがあります。
「相続できること」と「簡単に相続手続きができること」は、別の話です。
暗号資産は、預貯金や不動産とは違い、家族が存在を知らなかったり、利用していた事業者が分からなかったり、海外の事業者や自己管理型のウォレットを利用していたりすることで、相続手続きが難しくなることがあります。
そのため、暗号資産を保有している方は、相続のときのことだけでなく、生前に売却して現金化しておくことも選択肢の一つとして考えておくことをおすすめします。
暗号資産も相続財産になる
ビットコインなどの暗号資産を持ったまま亡くなった場合、その暗号資産も相続財産になります。
「ネット上のものだから相続とは関係ない」ということではありません。
また、暗号資産は相続税の課税対象にもなります。
預貯金、不動産、有価証券など、ほかの財産と合わせて相続財産全体を確認する必要があります。
つまり、
「暗号資産だから相続税はかからない」
ということではありません。
相続税は、暗号資産を換金できなくても待ってくれない
ここが、暗号資産の相続で特に注意したいところです。
相続税がかかる場合、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税をしなければなりません。
ところが、暗号資産は相続人がすぐに換金できるとは限りません。
例えば、父親が1,000万円相当の暗号資産を保有しており、そのほかにも自宅などの不動産や株式、預貯金などを保有していたとします。
財産全体を計算すると、相続税の申告・納税が必要になるケースです。
父親が亡くなった後、相続人が暗号資産の存在を知りました。
ところが、
「どこの海外事業者を利用していたのか分からない」
「問い合わせてもすぐに回答が来ない」
「相続人としての本人確認が進まない」
「自己管理型ウォレットで、必要な情報が分からない」
などの事情によって、暗号資産をすぐに換金できないことがあります。
それでも、相続税の申告・納税期限が当然に延びるわけではありません。
つまり、
暗号資産は1,000万円ある。
不動産や株式なども含めれば、相続税の申告・納税が必要になる。
でも、その1,000万円の暗号資産は、まだ現金化できない。
それでも相続税の期限はやってくる。
ということが起こり得ます。
相続税は、原則として相続開始時点の財産の価額をもとに計算されます。
「相続したけれど、まだ売れていない」という事情だけで、相続税の問題がなくなるわけではありません。
一番困るのは「家族が存在を知らない」ケース
暗号資産の相続で最初に問題になるのが、そもそも家族がその存在を知らないケースです。
例えば、父親がビットコインを保有していても、家族には一切話していなかったとします。
父親が亡くなれば、家族は銀行口座や証券口座、不動産などを調べるでしょう。
しかし、暗号資産について何も知らなければ、その存在を見つけられない可能性があります。
暗号資産は、通帳を見れば分かるとは限りません。
スマートフォンのアプリで管理していたり、暗号資産交換業者を利用していたり、自分でウォレットを管理していたりするからです。
本人にとっては大切な財産でも、家族からすると「そんな財産を持っていたとは知らなかった」ということが起こります。
海外の事業者や自己管理型ウォレットには注意
特に注意したいのが、海外の暗号資産交換業者を利用しているケースです。
海外の事業者だから必ず相続手続きができないというわけではありません。
しかし、日本語の窓口がなかったり、相続人からの問い合わせにどのように対応するのか分からなかったり、問い合わせをしてもすぐに回答が得られなかったりする可能性があります。
また、自分でウォレットを管理している場合には、さらに注意が必要です。
秘密鍵やシードフレーズなど、本人しか分からない情報が必要になることがあります。
その情報が分からなければ、家族が暗号資産にアクセスできなくなる可能性があります。
せっかく価値のある財産を残していても、相続人からすると「どこにあるのか分からない」「どうやって引き継ぐのか分からない」という財産になってしまいます。

だから「生前に売却する」という選択肢がある
ここまで考えると、
「だったら、相続させる前に売ってしまったほうがいいのでは?」
と思う方もいるでしょう。
私は、相続のしやすさという点では、生前に売却して現金化しておくことも十分検討する価値があると考えます。
例えば、1,000万円相当の暗号資産をそのまま相続させる場合、相続人は事業者の特定、残高の確認、相続手続きなどをしなければなりません。
海外の事業者なら、問い合わせの問題もあります。
自己管理型のウォレットなら、さらに難しくなる可能性があります。
一方、生前に本人が売却して現金化しておけば、その後は預貯金などとして管理できます。
相続人にとっても、財産の存在を確認し、金融機関の相続手続きをするという、一般的な相続に近い形になります。
「暗号資産を相続させる」ことだけが正解ではありません。
相続人が困らない形にしておくことも、大切な相続対策の一つです。
ただし「売れば税金がなくなる」という話ではありません
もちろん、生前に売却すればすべて解決するわけではありません。
暗号資産を売却して利益が出れば、原則として所得税の対象となり、雑所得に区分されます。
また、売却した後の現金をどのように管理し、誰にどのように残すのかという問題もあります。
したがって、
「相続税対策になるから、とにかく売却しましょう」
という話ではありません。
あくまで、相続人が財産を見つけ、手続きをし、必要に応じて換金するという負担を減らすために、生前売却も選択肢として考えるということです。
税金については、売却時期や取得価額、利益の状況などによって変わるため、必要に応じて税理士への相談も必要になります。
売却しないなら、少なくとも「存在」は伝えておく
「今後も値上がりすると思っているから、売却したくない」
という方もいるでしょう。
その場合、無理に売却する必要はありません。
ただし、少なくとも、
- 暗号資産を保有していること
- 利用している暗号資産交換業者
- 自分で管理しているウォレットの有無
- 相続人が財産の存在を確認するために必要な情報
などは、元気なうちに整理しておいたほうがいいでしょう。
特に秘密鍵やシードフレーズなどは、第三者に知られれば財産を失う危険があります。
単純に家族へすべて伝えるのではなく、本人が亡くなった後、必要な情報を適切に確認できる仕組みを考えておくことが重要です。
暗号資産は「相続させればいい」だけではない
暗号資産は相続財産になります。
しかし、
相続できる=簡単に相続できる
ではありません。
家族が存在を知らない。
海外の事業者を利用している。
問い合わせてもすぐに対応してもらえるとは限らない。
自己管理型のウォレットで、本人しか必要な情報を知らない。
こうした事情が重なると、相続人に大きな負担がかかる可能性があります。
さらに、相続税がかかる場合には、暗号資産を簡単に換金できない状態でも、申告・納税の期限はやってきます。
だからこそ、暗号資産を保有している方は、
「この財産を自分が亡くなった後、家族は本当に引き継げるのか」
まで考えておくことが大切です。
相続させるために情報を整理しておくのか。
それとも、生前に売却して現金化しておくのか。
どちらが適しているかは、保有している暗号資産の種類や管理方法、家族構成、財産全体の状況によって変わります。
暗号資産を含めた相続について、高砂市・加古川市でご相談をご希望の方は、後藤司法書士事務所までお問い合わせください。