「自分が死んだ後のことは、子どもに任せればいいと思っていました」
そう話していた方がいました。
子どもは2人。
ただ、1人は東北、もう1人は九州に住んでいて、実家である高砂にはほとんど帰ってきません。
「葬儀の手配くらいなら、さすがに帰ってきてくれると思う。でも、そのあと携帯の解約や部屋の片付けまで全部お願いするのは、正直申し訳ない」
そこで気になったのが、亡くなった後の手続きを誰かに任せておく方法でした。
人が亡くなった後には、相続だけでなく、さまざまな手続きが発生します。
葬儀や納骨、病院や施設への支払い、公共料金や携帯電話の解約、賃貸住宅の明渡し、自宅の荷物の整理。
こうした手続きを、誰がするのか。
終活では、「財産を誰に残すか」だけでなく、「亡くなった後、誰に何を頼むのか」まで考えておくことが大切です。
亡くなったら、誰かが手続きをしなければならない
「亡くなった後のことだから、家族がやってくれるだろう」
そう考えている方もいるかもしれません。
家族が近くに住んでいて、本人の希望も分かっているのであれば、家族が対応することもできます。
しかし、子どもが遠方に住んでいる、親族とは疎遠になっている、頼れる家族がいないという場合には、そう簡単にはいきません。
賃貸住宅に住んでいる方が亡くなれば、部屋の明渡しや荷物の整理が必要になります。
携帯電話や公共料金の契約も、そのままにはできません。
本人にとっては「亡くなった後」のことでも、残された人にとっては、その日から始まる仕事なのです。
死後事務委任契約とは?
そこで利用できるのが、死後事務委任契約です。
これは、本人が亡くなった後に必要となる一定の事務について、あらかじめ第三者などに依頼しておく契約です。
葬儀や納骨に関する手配、病院や施設の費用の精算、公共料金や携帯電話などの解約、賃貸住宅の明渡し、自宅の荷物の整理、郵便物の処理。
こうしたことについて、誰に何を頼むのかを決めておくことができます。
先ほどの相談者は、「葬儀と納骨は子どもに、それ以外の細かい手続きは契約で任せておきたい」という形で検討を始めました。
遺言書とは役割が違う
「遺言書を作っておけば、死後の手続きも誰かがやってくれるのでは」と思うかもしれません。
しかし、遺言書と死後事務委任契約は役割が違います。
遺言書は、主に「財産を誰に残すか」を決めるもの。
死後事務委任契約は、「亡くなった後の事務を誰に頼むか」を決めておくものです。
「自宅は長男に相続させる」という希望は遺言書で決められますが、「亡くなったら賃貸住宅を解約して荷物を整理してほしい」という希望は、死後事務委任契約で任せることを検討する話になります。
財産の行き先と、亡くなった後の手続きは、分けて考える必要があります。

「家族に頼めばいい」なら必要ない
死後事務委任契約は誰にでも必要なものではありません。
子どもが近くに住んでいて、葬儀も納骨も家の片付けも子どもに任せられるということであれば、あえて第三者に依頼する必要はないでしょう。
一方、子どもが遠方に住んでいる、親族に負担をかけたくない、身寄りが少ない、亡くなった後の手続きを頼める人がいないという方であれば、検討する意味があります。
大切なのは、契約を作ること自体ではなく、自分が亡くなった後、誰が何をするのかが決まっているかどうかです。
「何を頼むのか」まで決めておく
死後事務委任契約を考えるときは、「全部お願いします」ではなく、何を任せたいのかを具体的にしておくことが重要です。
「葬儀と納骨だけお願いしたい」という人もいれば、「賃貸住宅の解約や荷物の整理までお願いしたい」という人もいます。
自分にとって必要なことを一つずつ整理して、誰にどこまで任せるのかを決めておきます。
お金の準備も考えておく
死後事務には費用がかかります。
葬儀や納骨だけでなく、賃貸住宅の明渡しや荷物の整理などにも、まとまった費用が必要になることがあります。
そのため、「誰に頼むか」だけでなく、その費用をどう支払うのかも考えておく必要があります。
葬儀や納骨、荷物の整理など、死後事務に必要となる費用をどのように確保しておくのかについても、契約を結ぶ段階で確認しておきましょう。
死後事務委任だけで終活が完成するわけではない
判断能力が低下したときの財産管理については任意後見。
家族に財産の管理や処分を託したい場合には家族信託。
亡くなった後の財産の行き先については遺言書。
そして、亡くなった後の事務については死後事務委任。
それぞれ役割が違います。
だからこそ、「自分には何が必要なのか」を考えて、必要なものだけを選ぶことが大切です。
「亡くなった後のこと」も、自分で決めることができる
終活というと、どうしても「財産をどうするか」という話に目が向きます。
しかし、亡くなった後に必要になるのは相続だけではありません。
葬儀をどうするのか、どこに納骨するのか、住んでいた家をどうするのか、契約をどう整理するのか、荷物をどうするのか。
こうしたことも、誰かが決めて動かなければなりません。
冒頭の相談者も、「子どもに全部背負わせたくない」という気持ちから、少しずつ内容を整理していきました。
元気なうちに希望を整理して、必要であれば誰かに依頼しておく。
それによって、亡くなった後に家族や親族が「どうすればいいのか分からない」と困る場面を減らすことができます。
「自分が死んだ後のことだから、誰かに任せればいい」ではなく、「自分が元気なうちに、誰に何を任せるのかを決めておく」。
それも終活の大切な準備です。
高砂市・加古川市で、死後事務委任契約、遺言、任意後見、家族信託などについてお考えの方は、後藤司法書士事務所にご相談ください。