「法定相続情報一覧図を作りたいのですが、戸籍は何を集めればいいのでしょうか?」
自分で一覧図を作ろうとした方から、こう聞かれることがあります。
「亡くなった人の戸籍を1通取ればいいのか」「出生から死亡までと言われても、何通もあるけれど全部必要なのか」「昔の戸籍まで集める必要があるのか」。
このあたりが分かりにくいところです。
法定相続情報一覧図を作成するには、原則として、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をつなげて、相続人が誰なのかを確認できるようにする必要があります。
今回は、実際に戸籍を集めるときに、どこを見ればよいのかを説明します。
まず、亡くなった方の戸籍を集める
法定相続情報一覧図を作成するとき、まず必要になるのが、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍です。
正確には、出生から死亡までの身分関係の経過が分かる戸籍・除籍・改製原戸籍を集めます。
現在の戸籍だけを見ても、亡くなった方に子どもが何人いたのか、過去に婚姻や離婚があったのかなど、すべての情報が分かるとは限りません。
そのため、現在の戸籍から過去の戸籍へ、一つ前、また一つ前と確認していく必要があります。
亡くなった方の死亡時の戸籍を取得すると、そこに「従前戸籍」が記載されていることがあります。
その従前戸籍を取得すると、さらに前の戸籍が出てくることがあります。
こうして、出生時の戸籍まで確認を続けていきます。
戸籍が1通で終わるとは限らない
「出生から死亡までの戸籍」と聞くと、1通の戸籍ですべて分かるように思うかもしれません。
しかし、実際には何通もの戸籍が必要になることがあります。
結婚して戸籍を移った場合、転籍した場合、戸籍の改製があった場合などには、それぞれ別の戸籍が存在します。
「現在の戸籍を取ったから、これで全部」とは限りません。
戸籍に書かれている「どこから来たのか」「その前の戸籍はどこなのか」という情報を確認しながら、一通ずつ前の戸籍を取得していく必要があります。
「改製原戸籍」が出てくることもある
戸籍を集めていると、「改製原戸籍」という聞き慣れない名前の戸籍が出てくることがあります。
これは、戸籍の様式が変更されたことによって、新しい戸籍に作り替えられる前の戸籍です。
新しい戸籍に作り替えられた際に、以前の戸籍に記載されていた内容がすべてそのまま移されるとは限りません。
そのため、現在の戸籍だけでは分からない過去の身分関係を確認するために、改製原戸籍が必要になることがあります。
古い戸籍だから必要ない、というわけではなく、出生から死亡までの相続関係を確認するために必要であれば、かなり古い戸籍まで確認することになります。
なぜ、そこまで昔の戸籍が必要なのか
ここが一番大切なところです。
法定相続情報一覧図は、戸籍の記載から判明する法定相続人を一覧にするものです。
「誰が相続人なのか」を確認できなければ、正しい一覧図を作ることができません。
たとえば、亡くなった方には現在の妻と子ども2人がいるとします。
一見すると、相続人は妻と子ども2人だけに見えます。
ところが、過去の戸籍を確認してみると、以前の婚姻関係で子どもが1人いたことが分かる。
そうなると、その子どもも相続人になる可能性があります。
だからこそ、現在の戸籍だけではなく、過去の戸籍まで確認する必要があります。
前の結婚の子どもがいる場合は特に注意
相続手続きで問題になりやすいのが、亡くなった方に前の婚姻関係の子どもがいるケースです。
現在の家族からすると「子どもは2人です」と思っていても、戸籍を確認すると、以前の婚姻関係で生まれた子どもがいることがあります。
その場合、その子どもを含めて相続関係を確認しなければなりません。
このようなケースでは、戸籍を最後まで確認することの意味が特に大きくなります。
「家族に聞いたところ、相続人はこの人たちだけだった」というだけでは、法定相続人を確定することはできません。
子どもが先に亡くなっている場合もある
もう一つ注意したいのが、子どもが亡くなった方より先に亡くなっているケースです。
亡くなった方に子どもが2人いたものの、そのうち1人が先に亡くなっていたとします。
その先に亡くなった子どもに子どもがいれば、さらにその子どもについて確認する必要があります。
戸籍を確認していくと、単純な「配偶者と子ども」という関係では終わらないことがあります。
誰が相続人になるのかを判断するためにも、戸籍の確認を途中で止めず、必要なところまで進めることが重要です。

戸籍はどこで取ればいい?
戸籍は、基本的に本籍地の市区町村で取得します。
ただし、2024年3月1日から戸籍の広域交付制度が始まりました。
これにより、本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属については、一定の条件のもとで、本籍地が遠方にある場合でも最寄りの市区町村の窓口で戸籍を請求できるようになっています。
以前は、本籍地ごとに郵送で請求することも多かったため、戸籍を集める負担は以前より小さくなっています。
ただし、広域交付には対象となる戸籍の範囲や請求方法について条件があります。
兄弟姉妹などの傍系親族の戸籍を、広域交付で自由に取得できる制度ではありません。
広域交付は窓口での請求が基本となり、郵送や代理人による請求には対応していません。
そのため、すべての戸籍を広域交付だけで集められるとは限りません。
戸籍を集めたら、順番につながっているか確認する
戸籍が何通か集まったら、枚数だけを確認するのではなく、それぞれの戸籍がきちんとつながっているかを確認します。
死亡時の戸籍からその前の戸籍、さらにその前の戸籍、そして出生時の戸籍というように、切れ目なく確認できる状態になっているかを見ていきます。
途中の戸籍が抜けていると、その間に婚姻や離婚、子どもの出生などの重要な身分関係が記載されている可能性があります。
「何通集めたか」ではなく、「出生から死亡までの経過が確認できる状態になっているか」が重要です。
亡くなった方の戸籍だけでは終わらない
法定相続情報一覧図を作るために必要なのは、亡くなった方の戸籍だけではありません。
一般的には、亡くなった方の住民票の除票、相続人全員の現在の戸籍、申出人の氏名・住所を確認できる公的書類、法定相続情報一覧図も必要になります。
ただし、相続関係によって追加の戸籍などが必要になる場合があります。
代襲相続が発生している場合などは、先に亡くなった子どもと、その子どもとの関係が分かる戸籍も確認する必要があります。
「必要書類はこれだけ」と最初から決めつけるよりも、戸籍を確認しながら必要な範囲を判断することが大切です。
戸籍集めで一番大変なのは「取得」より「読み取ること」
戸籍は、昔と現在では様式も記載方法も違います。
古い戸籍になると、手書きで書かれていたり、現在では使われていない地名や漢字が出てきたりすることもあります。
戸籍を何通も集めても、「この戸籍とこの戸籍がどうつながっているのか」「この人は誰なのか」「この記載から、相続人が誰だと分かるのか」を読み取らなければなりません。
法定相続情報一覧図を自分で作る場合、戸籍を集めること自体よりも、むしろここで難しさを感じる方が多いのではないでしょうか。
戸籍がそろっているように見えても、途中の戸籍が抜けていたり、必要な身分関係を確認できていなかったりすると、法務局で補正を求められることがあります。
戸籍がそろったか分からないときは
「戸籍を何通か取ってみたけれど、これで全部なのか分からない」「出生までさかのぼったつもりだけれど、本当に相続人を確認できているのか不安」という場合には、無理に一覧図を作り始める必要はありません。
まず、集めた戸籍を並べて、亡くなった方の身分関係が出生から死亡までつながっているかを確認します。
そこで、「この戸籍の前が分からない」「この人が相続人になるのか判断できない」というところが出てきたら、その段階で専門家に相談する方法もあります。
法定相続情報一覧図は、単に戸籍を書き写して作る書類ではありません。
戸籍から相続関係を正確に確認したうえで、その内容を一覧図にするものだからです。
戸籍が集められれば、一覧図作成まで進めやすい
法定相続情報一覧図を自分で作る場合、最初の大きな作業が戸籍の収集です。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認し、相続人全員の戸籍もそろえる。
そのうえで相続関係を確定させ、法務局の様式や記載例を参考に一覧図を作成します。
相続関係が単純で、戸籍も問題なくつながっているのであれば、ご自身で手続きを進めることもできます。
一方で、前婚の子がいる、子が先に亡くなっている、戸籍が大量にある、古い戸籍の読み取りが難しいといった場合には、戸籍の段階から司法書士に依頼することもできます。
当事務所でも、戸籍の収集から相続関係の確認、法定相続情報一覧図の作成・申出までご相談いただけます。
「戸籍は集めたけれど、これで足りているのか分からない」という段階でも構いません。
高砂市・加古川市で相続手続きについてお悩みの方は、後藤司法書士事務所までご相談ください。