「相続人の中に、長年連絡を取っていない親族がいるんです」
相続の相談で、こう切り出す方がいました。
亡くなったのは父親で、相続人は本人を含めて3人のきょうだいのはずでした。
ところが戸籍を確認すると、一番上の兄はすでに亡くなっており、その子ども、つまり相談者にとっては甥にあたる人が、代襲相続人として加わることが分かりました。
甥とは、子どもの頃に数回会ったきり。
しかも、兄の妻とは折り合いが悪く、疎遠になったまま何十年も経っていました。
「甥の連絡先どころか、今どこに住んでいるかも分からない」
このような場合、相続の手続きを進めるためには、どうやって本人に連絡すればよいのでしょうか。
疎遠でも、相続人であることに変わりはありません
長年連絡を取っていなかったとしても、そのことだけで相続人ではなくなるわけではありません。
先ほどの例のように、本来の相続人である長男がすでに亡くなっている場合、長男に子がいれば、その子が代襲相続人になります。
ほかの相続人と何十年も交流がなかったとしても、代襲相続人であることに変わりはありません。
遺産分割協議をするのであれば、その人も協議に参加する必要があります。
「疎遠だから連絡を取らずに進める」というわけにはいきません。
被代襲者の配偶者を通じて連絡できないこともある
ここで問題になるのが、代襲相続人への連絡方法です。
被代襲者である長男はすでに亡くなっており、その妻と子どもが残っているケースでは、「長男の妻に連絡して子どもの住所を教えてもらう」という方法が、関係の悪さから取りにくいことがあります。
だからといって、相続手続きを進められないわけではありません。
代襲相続人本人の住所が分かるのであれば、本人に直接連絡することができます。
まずは相続人の住所を確認する
連絡先が分からない場合でも、住所を確認できる場合があります。
戸籍をたどって相続人を確認したうえで、戸籍の附票などから、その相続人の現在の住所を調査します。
住所が確認できれば、その住所宛てに相続についての手紙を送ることができます。
何十年も連絡していない相手であれば、いきなり電話をするよりも、まず手紙で事情を説明するほうが自然な場合もあります。
最初の手紙では、何を伝える?
最初から細かな相続の話をすべて書く必要はありません。
誰が亡くなったのか、自分が誰なのか、戸籍を確認したところ相続人に当たること、相続手続きについて連絡を取りたいこと、連絡先。
まずはこの程度で構いません。
たとえば、次のような内容です。
突然のお手紙で失礼いたします。
このたび、○○○○様の相続手続きについて、ご連絡を差し上げました。
戸籍を確認したところ、○○様の相続について、あなたが相続人に当たることが分かりました。
今後の相続手続きについて、一度ご相談させていただきたく、ご連絡しております。
お手数をおかけしますが、下記連絡先までご連絡いただけますと幸いです。
最初の手紙の目的は、いきなり結論を迫ることではなく、相続の事情を説明して、本人と連絡を取れる状態にすることです。

本人から送るか、専門家から送るか
この手紙、本人が送るべきか、司法書士などの専門家が送るべきか、迷う方もいます。
これはケースバイケースです。
もともと関係がそれほど悪くなく、単に疎遠になっていただけであれば、本人からの手紙のほうが、かえって温かみが伝わることもあります。
一方、先ほどの相談者のように、被代襲者の配偶者との関係がこじれていたり、感情的な対立が予想されたりする場合には、司法書士など専門家名義で送るほうがスムーズに進むことがあります。
専門家からの手紙は、「相続手続きとして必要な連絡である」ということが伝わりやすく、受け取る側も事務的な話として冷静に読みやすくなるためです。
どちらが正解ということはなく、相続人同士の関係性や、これまでの経緯を踏まえて選ぶことになります。
「相続放棄してください」と書くのは注意が必要
疎遠な相続人に手紙を送る際、「相続放棄してください」「財産はいらないということでお願いします」などと書きたくなることもあるかもしれません。
しかし、ここは注意が必要です。
家庭裁判所に申述する「相続放棄」と、遺産分割協議の中で財産を取得しないことは、同じではありません。
相手に何をしてもらう必要があるのかを整理せず、単に「放棄してください」と伝えるのは適切ではありません。
遺産の内容や相続関係を説明したうえで、必要な手続きを案内することが大切です。
手紙を送っても返事がない場合は?
手紙を送ったからといって、必ず返事が来るとは限りません。
その場合は、再度手紙を送るなど、状況に応じて連絡を試みることになります。
遺産分割協議をするのであれば、相続人全員が関与する必要があります。
連絡が取れない相続人を外して、遺産分割協議を成立させることはできません。
連絡がつかないまま時間だけが経っている場合には、相続人の状況や遺産の内容を踏まえて、次の対応を検討する必要があります。
住所が分からない場合は?
さらに難しいのが、相続人の現在の住所そのものが分からないケースです。
先ほどの相談者のように、甥がどこに住んでいるか見当もつかないという状況も珍しくありません。
この場合も、いきなり「連絡できない」と諦めるのではなく、戸籍や戸籍の附票などを確認しながら、現在の住所を調べられるかを検討します。
相続人の調査から住所の確認まで、自分で進めることが難しい場合には、専門家に相談する方法もあります。
疎遠な相続人への連絡は、まず事情を伝えることから
長年連絡を取っていない親族が相続人になっていると、「いったい何と書けばいいのか」と迷うものです。
しかし、最初から複雑な話をまとめようとする必要はありません。
誰が亡くなったのか、なぜ連絡をしたのか、相続手続きについて話をしたいということを、落ち着いて伝えることが大切です。
冒頭の相談者も、いきなり電話をするのではなく、まず簡単な事情を書いた手紙を送るところから始めることになりました。
特に、代襲相続人のように、相続人になった本人とほかの相続人との間に長年の交流がない場合には、本人に直接、書面で事情を伝える方法があります。
相続人が疎遠になっていて連絡先が分からない、手紙を送りたいけれど何と書けばよいか分からない、といった場合には、相続人の調査からご相談いただけます。
後藤司法書士事務所では、高砂市・加古川市を中心に、相続人の調査、戸籍・戸籍の附票の確認、疎遠な相続人への連絡方法など、相続手続きに関するご相談をお受けしています。
相続人同士の関係やこれまでの経緯によって、適切な連絡方法は変わります。まずは現在の状況をお聞かせください。