父が亡くなり、実家の相続登記をしようと法務局で登記簿を取り寄せました。土地については、間違いなく父の名義で登記されています。ところが、その土地の上に建っているはずの家を調べてみると、登記簿そのものが存在しません。
「ずっと住んでいた家なのに、登記されていないってどういうことですか」
実家ですから、当然、家も土地と一緒に登記されているものだと思い込んでいたそうです。
こうなると、土地だけ相続登記して終わり、というわけにはいきません。
昔の実家には、未登記の建物がよくある
今ほど住宅ローンが一般的でなかった時代には、現金でこつこつ貯めたお金で、近所の大工さんに頼んで家を建てる、ということがよくありました。金融機関から融資を受けていなければ、建物に抵当権を設定する必要もなく、登記を急ぐ事情そのものがありません。登記をしないまま、そこに何十年も住み続ける、ということが実際に起こります。
「ずっと住んでいたから、登記のことなんて考えたこともなかった」というのは、決して珍しい話ではありません。
固定資産税の通知書には載っているのに
不思議なのは、固定資産税の納税通知書を見ると、ちゃんとその建物が課税対象として載っていることです。これは、固定資産税を課税するための台帳と、法務局が管理する不動産登記簿が、もともと別の仕組みだからです。市区町村は、現地調査や航空写真、周辺住民からの申告などによって建物の存在を把握して課税していますが、それと登記簿に記載があるかどうかは連動していません。「税金の通知書に載っているから登記もされているはず」とは限らないのです。
実家に限らず、物置やカーポート、増築した部分など、建物の一部だけが未登記のまま残っているというケースもあります。相続のタイミングで建物全体をあらためて確認してみると、こうした部分が見つかることもあります。
まず「誰の建物か」を確認する
登記された建物であれば登記簿を見れば所有者が分かりますが、未登記の建物にはその手がかりがありません。かわりに、固定資産税の納税通知書や課税台帳、建築時の契約書や領収書、建築確認の関係書類など、残っている資料から所有者を確認していくことになります。
ここで意外と多いのが、「父が建てたと思っていたら、実は祖父の代からあった家だった」というケースです。土地は父が買ったけれど、建物自体はそれ以前から祖父が住んでいたものを引き継いだ、ということもあります。この場合、建物の所有権についても、祖父から父、父から相続人へという流れを確認する必要が出てきます。建物が未登記だからこそ、資料や家族への聞き取りが何より重要な手がかりになります。

登記したいなら、まずは「表題登記」から
建物をきちんと登記したい場合、いきなり所有者を登記する前に、その建物がどこに、どんな大きさ・構造で存在しているかを登記簿に記載する「表題登記」という手続きが必要になります。この調査や申請は、土地家屋調査士という別の専門家の領域です。現地を測量し、建物の形状や床面積を確認したうえで登記簿が作られます。
表題登記が済んだあとで、所有権を登記する「保存登記」を行うことになり、こちらは相続登記と同じく司法書士が扱う手続きです。相続がすでに発生している場合は、表題登記と保存登記を、亡くなった父ではなく、最初から相続人の名前で行うことも可能です。土地家屋調査士と司法書士、それぞれの専門領域が分かれているため、未登記建物を整理するときは両方の専門家が関わることになります。
取り壊す予定なら、むしろ話はシンプルになる
「古い家なので、売る前に取り壊したい」という場合は、逆に手続きは簡単になります。登記されている建物を取り壊すと法務局への滅失登記が必要になりますが、もともと登記が存在しない建物であれば、消すべき登記もありません。必要なのは、市区町村への家屋滅失の届け出です。これを出さないと、取り壊した後も固定資産税の課税対象として残ってしまうことがあるため、忘れずに済ませておきたい手続きです。登記の面だけで見れば、未登記のまま取り壊すほうが、むしろ手間は少なくて済みます。
売却するなら、早めに所有者を確認しておく
実家を売却する予定があるなら話は別です。買主やその融資先の金融機関は、所有者のはっきりしない建物をそのまま受け入れることはできません。建物を解体せずに引き渡すのであれば、売却前に表題登記・保存登記を済ませて権利関係を明確にしておく必要があります。建物をあらかじめ解体したうえで土地だけを売る、という進め方であれば、この手間を省ける場合もあります。どちらの方法を選ぶかによって、必要な手続きや費用、売却までにかかる期間も変わってくるため、早い段階で方針を決めておくと後の動きがスムーズになります。
土地と建物は、別の不動産として確認する
実家を相続すると、「土地も建物も親のもの」とまとめて考えがちですが、登記の状況を調べてみると、土地は登記されているのに建物だけ未登記、ということがあります。
相続した実家を売却する、取り壊す、建て替えるといった予定があるなら、土地の登記簿だけでなく、建物についても確認しておきましょう。「登記簿に建物が出てこないから、そのままでいい」とは限りません。特に売却や建て替えを考えているなら、計画を立てる前の段階で確認しておくほうが、後になって慌てずに済みます。
未登記建物の確認や登記についてお困りの際は、ご相談ください。高砂・加古川エリアで相続した不動産の名義についてお悩みの方は、後藤司法書士事務所までご連絡ください。