「相続した株を売りたいけれど、税金はかかるの?」
株式を相続した後、売却を考える方は少なくありません。
相続した株を売却すると、相続税とは別に、株式の売却について税金がかかることがあります。
しかも、相続した株の「取得費」は、相続した時点の株価になるわけではありません。
ここは、相続した株を売るときに知っておきたい重要なポイントです。
相続した株を売ると、税金がかかることがある
株式を売却して利益が出ると、原則として、その利益について譲渡所得として課税されます。
例えば、父が100万円で購入した株式を子が相続し、相続した時点では250万円の株価になっていたとします。
その後、株価が300万円になった時点で、その株式を売却したとします。
この場合、
「相続した時点では250万円だったのだから、50万円が利益なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、原則として、そうではありません。
相続した株式の取得費は、相続した時点の250万円ではなく、父がその株式を取得したときの100万円を引き継ぎます。
そのため、単純化すると、
300万円-100万円=200万円
が譲渡益の計算の基礎になります。
つまり、相続した時点の株価が、そのまま相続人の取得費になるわけではありません。
相続した株の取得費は、原則として亡くなった人から引き継ぐ
ここが、相続した株を売るときの重要なポイントです。
相続した株式の取得費は、原則として、亡くなった方がその株式を取得するために支払った金額を引き継ぎます。
先ほどの例でいえば、
- 父が購入したとき:100万円
- 相続した時点:250万円
- 相続人が売却したとき:300万円
という状況です。
この場合、原則として相続人が引き継ぐ取得費は100万円です。
そのため、相続した株を売却する場合には、亡くなった方がいつ、いくらでその株式を取得したのかを確認することが重要になります。

「昔買った株で、取得費が分からない」ときは?
相続した株の中には、
「父が何十年も前に買った株なので、いくらで購入したのか分からない」
というものもあります。
この場合に問題になるのが、株を売却したときの譲渡所得をどのように計算するのかということです。
まずは、取得費を確認できる資料が残っていないか探してみましょう。
- 証券会社の取引履歴
- 取引報告書
- 株式の購入に関する書類
- 過去の確定申告書類
などが手がかりになります。
それでも取得費を確認できない場合には、税法上、取得費を計算するための取り扱いがあります。
取得費の計算方法によって、売却したときの譲渡所得や税額が変わる可能性があります。
そのため、取得費が分からない株式を売却する場合は、売却前に税理士へ確認しておくことをおすすめします。
相続した株を売るなら、相続税の取得費加算も確認
相続した株式を売却する場合、確認しておきたい制度があります。
相続税の取得費加算の特例です。
相続や遺贈によって取得した株式を、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却した場合、相続税が課税されていることなどの要件を満たせば、納付した相続税の一部を株式の取得費に加算できます。
取得費が増えると、その分、株式を売却したときの譲渡所得が小さくなるため、譲渡所得にかかる税金を抑えられる可能性があります。
つまり、
相続税を払っている人が、相続した株を売却する場合には、使える可能性のある特例がある
ということです。
ただし、実際にいくら加算できるのか、特例を利用できるのかは、個々の相続内容によって変わります。
「相続税」と「株を売ったときの税金」は別
ここは混同しやすいところです。
株式を相続すると、相続財産として相続税の対象になることがあります。
その後、その株式を売却して利益が出れば、今度は譲渡所得について税金の問題が生じます。
つまり、
相続したときの税金
と
相続した株を売ったときの税金
は別の問題です。
「相続税を払ったから、売却したときにはもう税金はかからない」
というわけではありません。
一方で、先ほどの取得費加算のように、相続税を納めた方が相続した株式を売却するときに利用できる可能性のある制度もあります。
すぐに売るべきとは限らない
相続した株を売るか、そのまま保有するかは、相続人自身が判断することになります。
ただし、株式は価格が変動します。
相続した時点より株価が上がることもあれば、下がることもあります。
また、売却する場合には税金の計算も必要になります。
そのため、
「相続手続きが終わったから、とりあえず全部売ろう」
と決める前に、
いくらで取得した株なのか
取得費を確認できる資料があるか
相続税の取得費加算を利用できる可能性があるか
を確認しておくことが大切です。
なお、株式を売却するかどうかや具体的な税額については、税理士などの専門家に確認してください。

相続した株を売るまでの流れ
相続した株を売却する場合、いきなり売却するわけではありません。
大まかな流れは、
① 誰が株式を相続するのか決める
↓
② 遺産分割など、必要な相続手続きを行う
↓
③ 相続人の証券口座へ株式を移す
↓
④ 必要に応じて株式を売却する
↓
⑤ 売却後の譲渡所得について確認する
という流れになります。
株式そのものの相続手続きについては、前の記事で詳しく説明しています。
相続した株を売る前に確認しておきたいこと
相続した株を売却する場合、少なくとも次の点は確認しておきましょう。
① 誰がその株式を相続したのか
② 亡くなった方はいくらでその株式を取得したのか
③ 取得費を確認できる資料が残っているか
④ 相続税の取得費加算を利用できる可能性があるか
⑤ 売却した場合の税金について確認したか
特に、取得費が分からない株式や、相続税を納めているケースでは、売却前に確認しておいたほうがよいことがあります。
株式を売る前に、相続全体を整理することも大切
相続した株式を売却するときには、その株式だけを見て判断するのではなく、相続財産全体を確認することも大切です。
例えば、
「株式は長男が取得する」
「不動産は次男が取得する」
「預貯金で差額を調整する」
といった分け方をすることもあります。
株式の価格が変動する以上、遺産分割の内容を決める段階で、株式の価値をどう考えるのかも問題になります。
そのため、株式を売却するかどうかだけでなく、株式を含めた遺産全体をどのように分けるのかを考えたうえで手続きを進めることが大切です。
株式を含む相続手続きもご相談ください
株式の相続は、証券会社での手続きだけで終わるとは限りません。
誰が株式を取得するのかを決め、遺産分割協議書を作成し、相続人の証券口座へ移すという手続きがあります。
さらに、その後に売却する場合には、譲渡所得や相続税の取得費加算など、税金について確認が必要になることがあります。
後藤司法書士事務所では、株式を含む相続について、遺産分割協議書の作成や相続登記など、相続手続き全般についてご相談いただけます。
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