「実家、もう誰も住む予定がないので、壊してから売ろうと思っているんです」
相続の相談で、そう話される方がいました。
築45年ほどの木造住宅で、この10年ほど空き家になっていたそうです。
「古い家のままじゃ売れないだろうから、更地にしてから不動産屋に持っていこうと考えていました」
そう言われて、まず不動産会社に建物付きの状態でも査定を取ってみることをお勧めしました。
空き家は、必ずしも「壊してから売る」のが正解とは限りません。
古い家でも、そのまま売れることがある
「築何十年だから、建物には価値がない」
そう思ってしまうかもしれません。
しかし、土地と建物をセットで購入したい人もいます。
購入後に自分でリフォームして住みたい人や、建物を取り壊すことを前提に土地を探している人です。
建物の状態によっては、リフォームや修繕をして利用できる場合もあります。
そのため、相続した空き家を売る場合には、最初から解体すると決めるのではなく、建物を残した状態で売却できる可能性があるかを確認することが大切です。
解体すると、どのくらい費用がかかる?
もちろん、建物を残しておくことが難しいケースもあります。
老朽化が進み、雨漏りや傾きがある。
庭木が伸び放題になっている。
長期間空き家になっていて、修繕して使うことが現実的ではない。
このような場合には、解体して土地として売却する方法が考えられます。
ただし、解体には費用がかかります。
建物の大きさや構造、立地などによって費用は変わりますし、庭の物置やブロック塀、残置物などの処分費用が別途必要になることもあります。
さらに、解体したからといって、その土地が必ず高く売れるとは限りません。
「壊す費用」と「壊した後の土地の売却価格」をセットで考える必要があります。
解体する前に、不動産会社に相談する
解体を考えているなら、先に不動産会社へ相談してみることをおすすめします。
「この家を解体したら売れますか」「建物を残したまま売る方法はありますか」と聞いてみましょう。
建物付きで売る場合と、更地にして売る場合の両方について査定してもらえば、比較しやすくなります。
たとえば、建物付きなら480万円、更地なら650万円で売却できるとします。
一見すると、更地にしたほうが170万円高く売れるように見えます。
ただし解体費用が150万円かかるなら、更地にした場合の手取りは500万円です。
建物付きの480万円と比べても、実際の差はわずかしかありません。
売却価格だけではなく、解体費用などの支出も含めて考えることが大切です。
空き家を放置するのもおすすめできない
「解体費用が高いから、とりあえずそのままにしておこう」という判断にも注意が必要です。
誰も住んでいない空き家は、時間が経つほど建物の傷みが進みます。
雨漏りに気づかないまま放置すれば、柱や床などの腐食につながることがあります。
庭木が伸びれば、隣地や道路に影響することもあります。
また、空き家については、管理が十分に行われていない場合に、市区町村から必要な対応を求められる制度があります。
特定空家とは、単に古い空き家という意味ではありません。
倒壊などの危険がある、衛生上有害となるおそれがある、周辺の生活環境を損なっているなど、放置することが不適切な状態にある空き家をいいます。
このような特定空家に該当すると判断されると、行政による指導や勧告などの対象となることがあります。
「誰も住んでいないだけだから大丈夫」と考えず、今後どうするのかを早めに決めることが重要です。

解体する前に、税金についても確認する
空き家を解体するときには、固定資産税についても確認しておきましょう。
住宅が建っている土地については、一定の要件のもとで、固定資産税の課税標準を軽減する住宅用地の特例があります。
そのため、建物を解体すれば、土地についてこの特例の適用関係が変わり、税負担が増える場合があります。
ただし、空き家を適切に管理せず、管理不全空家や特定空家について市区町村から勧告を受けた場合には、住宅用地の特例の対象から外れることがあります。
つまり、「壊したら税金が上がるから、何もしない方がいい」と単純に考えることもできません。
売却の可能性、解体費用、建物の状態、税金などをまとめて考える必要があります。
相続した空き家なら、売却時の税制も確認する
相続した空き家を売却する場合には、一定の要件を満たすことで、譲渡所得について特例を利用できる場合があります。
いわゆる「空き家の3,000万円特別控除」です。
ただし、誰でも利用できるわけではありません。
相続した時期や建物の状態、売却方法など、いくつかの要件があります。
制度には適用期限もあるため、「いつか売ればいい」と考えていると、利用できる機会を逃してしまう可能性があります。
相続した空き家を売却する場合には、売る時期や売却方法を決める前に、利用できる特例がないか確認しておくことが大切です。
「壊す・残す」は、売却方法を見てから決める
相続した空き家について大切なのは、古いから壊す、空き家だから売る、と先に決めてしまわないことです。
まずは建物と土地の状態を確認し、建物を残した場合と解体した場合、それぞれで売却できる可能性を不動産会社に確認します。
そのうえで、解体費用はいくらか、売却価格はいくらになりそうか、固定資産税はどうなるか、空き家を維持する負担はいくらか、利用できる税制上の特例はあるかを比較します。
そうすれば、「なんとなく壊した方がよさそう」という判断ではなく、具体的な数字を見ながら決めることができます。
まとめ|空き家は、解体する前に一度立ち止まって考える
相続した空き家をどうするかは、簡単には決められません。
建物を残したまま売却する方法もあれば、解体して土地として売却する方法もあります。
一方で、解体には費用がかかり、税金への影響もあります。
反対に、空き家を長期間放置すれば、建物の老朽化が進み、管理の負担も大きくなります。
だからこそ、「壊すか、残すか」を先に決めるのではなく、その不動産ならどの方法が適しているのかを確認することが大切です。
相続した空き家の場合、売却を検討する前に相続登記が必要になることがあります。
また、登記名義が何代も前のままになっている、相続人が複数いるなど、権利関係の整理が必要になるケースもあります。
こうした名義や相続関係の整理については、司法書士に相談することができます。
高砂市・加古川市で相続した空き家や土地についてお困りの方は、後藤司法書士事務所までご相談ください。