「市役所から手紙が届いて、正直びっくりしました」
相続した実家を3年ほどそのままにしていた方が、こう話していました。
遠方に住んでいて、今のところ使う予定もない。
売るにも時間がかかるし、解体するにもお金がかかる。
「とりあえず、そのままにしておこう」と考えているうちに、庭木がどんどん伸びていたそうです。
ある日届いたのは、近隣住民からの苦情を受けた市からの通知でした。
庭木が道路にはみ出し、通行の妨げになっているという内容です。
「誰も住んでいないだけで、まさか行政から連絡が来るとは思っていませんでした」
空き家は、人が住まなくなったほうが、かえって傷みが早く進みます。
誰も使っていない間にも建物は少しずつ傷み、庭は荒れ、管理の負担は大きくなっていきます。
状態によっては、所有者だけの問題では済まなくなることもあります。
空き家は、住んでいないだけでも傷んでいく
人が住んでいる家なら、雨漏りや水漏れ、建物の異常などにも比較的早く気づくことができます。
しかし、誰も住んでいない家では、ちょっとした異変を発見する人がいません。
雨漏りが始まっていても気づかない。
屋根や外壁が傷んでも、そのままになる。
そうしているうちに、最初は小さな傷みだったものが、大きな修繕が必要な状態になることがあります。
特に木造住宅は、換気が十分に行われないことで湿気がこもりやすくなり、カビや腐食などにつながることがあります。
また、誰も住んでいない家は、放火の対象になりやすいことも知られています。
人の出入りがなければ異変に気づく人もいないため、万が一火が出ても発見が遅れ、近隣への延焼につながるおそれもあります。
「まだ売るかどうか決めていないから」と何年も放置していると、売却するときには相続した当初よりも条件が悪くなっている可能性があります。
庭や敷地の管理も必要になる
空き家で忘れられがちなのが、建物以外の管理です。
冒頭のケースのように、庭木や雑草は、誰も手入れをしなければ伸びていきます。
敷地から道路や隣地にはみ出せば、近隣の方に迷惑をかけることもあります。
害虫や害獣が発生したり、ごみを不法投棄されたりする可能性もあります。
遠方に住んでいる場合、こうした管理のために定期的に現地へ行く必要があり、それが大きな負担になることもあります。
管理を業者に依頼すれば、その分の費用もかかります。
空き家を所有するということは、建物だけではなく、その敷地全体を管理することでもあります。
「特定空家」に指定されると何が起こる?
空き家の状態が悪化すると、「特定空家」として行政から対応を求められる可能性があります。
特定空家とは、単に「古い家」や「誰も住んでいない家」という意味ではありません。
そのまま放置すると倒壊などの危険がある、衛生上有害となるおそれがある、周辺の生活環境を損なっているなど、放置することが不適切な状態にある空き家をいいます。
市区町村から助言・指導を受けても改善されず、勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例の対象から外れる場合があります。
さらに、必要な措置を命じられることもあります。
「誰も住んでいないだけだから、行政から何か言われることはない」とは限りません。
冒頭のケースも、庭木の苦情という比較的軽い段階での通知でしたが、対応が遅れれば、より重い段階に進んでいた可能性があります。

「管理不全空家」という制度もある
現在は、特定空家になる前の段階についても注意が必要です。
空家法の改正により、「管理不全空家等」という区分が設けられました。
これは、適切な管理が行われておらず、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家などを対象とするものです。
建物が完全に危険な状態になるまで放置してよいわけではなく、管理が不十分な段階から、所有者に適切な管理を求める仕組みが設けられています。
相続した空き家を長期間そのままにしている場合には、こうした制度についても知っておく必要があります。
解体すれば、それですべて解決するわけでもない
では、「だったら古い家を壊してしまえばいい」と考えるかもしれません。
しかし、解体にも費用がかかります。
建物を解体した後は、土地として管理する必要があります。
草が生えれば草刈りが必要ですし、売却できなければ固定資産税などの負担も続きます。
そのため、空き家を相続したときには、残すか、売るか、解体するかを、その土地の条件や費用を踏まえて考える必要があります。
解体を検討する際の考え方については、前の記事でも詳しく説明しています。
「いつか売ろう」が一番長引きやすい
相続した空き家について、「もう少し落ち着いてから考えよう」「そのうち売ればいい」と考えていると、気づけば数年経っていたということがあります。
冒頭のケースも、まさにこの3年でした。
その間にも建物は傷み、庭の管理費用なども発生します。
状態が悪くなれば、売却するときに解体費用や修繕費用が問題になることもあります。
もちろん、すぐに売却や解体を決める必要はありません。
ただ、「何もしない」という選択をするのであれば、その間どう管理するのかまで決めておくことが大切です。
相続した空き家は、早めに選択肢を整理する
相続した空き家について最初に考えたいのは、「今すぐ売るかどうか」だけではありません。
建物はどの程度傷んでいるか、現在のまま売却できそうか、解体した場合にいくらかかるか、空き家を維持するためにいくらかかるか、固定資産税はいくらか、今後自分で管理できるか。
これらを確認します。
そのうえで、売却するのか、解体するのか、しばらく保有するのかを決めていけばいいのです。
冒頭のケースも、市からの通知をきっかけに、まずは庭木の剪定業者を手配し、そのうえで今後の方針を検討することになりました。
大切なのは、何も決めないまま年月だけが過ぎてしまうことを避けることです。
まとめ|相続した空き家は「放置」が一番簡単とは限らない
相続した空き家は、使う予定がなくても所有者として管理する必要があります。
建物は少しずつ傷み、庭や敷地の管理も必要になります。
状態によっては、管理不全空家や特定空家として行政から対応を求められることもあります。
だからといって、すぐに解体すればいいというわけでもありません。
売却、解体、保有など、それぞれの方法にかかる費用や負担を確認したうえで、今後どうするのかを決めることが大切です。
相続した空き家の名義や相続関係が整理できていない場合には、司法書士に相談することで、まず現在の権利関係を確認することもできます。
高砂市・加古川市で相続した空き家や不動産についてお困りの方は、後藤司法書士事務所までご相談ください。