相続があった際、「誰の名義にすればいいのか」という質問について
相続のご相談を受けていると、「結局、誰の名義にするのが正解なんですか?」という質問をよくいただきます。
特にご自宅や預貯金といった財産については、今後の生活に直結するため、とても重要な論点です。
ただ、この点について最初にお伝えしたいことがあります。
結論:相続の名義に“絶対の正解”はない
相続の名義について、「これが正解」というものはありません。
法律上のルールはありますが、実際の現場ではご家族の事情や関係性、そして何より故人や残されたご家族の気持ちによって、最適な形は変わります。
だから私は、一つの答えを押し付けるのではなく、いくつかの選択肢を整理した上で、そのご家族が納得できる形を一緒に考える、という立場で関わっています。
私が一番大事にしている考え方
相続の名義を考えるとき、私がいちばん大事だと考えているのは人の気持ちです。
もちろん遺言があれば、遺言が最優先となることは間違いありません。ですが、遺言をされないままお亡くなりになられるケースが大半です。そこで何を重視して判断するべきなのか。
私は、故人の意思と、残されたパートナーの気持ちや生活が最も重要だと考えています。
画一的に何かを優先する・切り捨てるという話ではなく、そのご家族にとって何が一番納得できる形なのかを丁寧に見ていくことを心がけています。
例えば、亡くなった方がご存命であったならなんと言っただろうか。
そして、これから生活していく配偶者の方が、不安なく日々を過ごせるのか。
この両方を見ながら判断していく必要があります。
正直に言うと、名義の問題というのは「誰の名前にするか」という話であると同時に、
その状態で安心して暮らせるかどうかの問題だと思っています。
現実の選択肢はいくつもある
実際の相続では、名義の決め方にはいくつかのパターンがあります。
・配偶者が単独で相続する
・子どもが相続する
・相続人で共有する
また不動産の名義変更(登記申請)を考えると、「子ども名義にすれば登記は1回ですむため、登録免許税や司法書士の報酬、手続きの負担が減る」といった考え方もあります。
効率だけを見れば合理的に見える場面もありますが、それがそのまま安心につながるかは別の問題です。
子ども名義という選択について
よく聞くのが、「とりあえず子ども名義にしておけば手続きが楽」という考え方です。
この考えも間違いではありませんし、合理性がある場面もあります。
ただその状態で生活していく中で、残された配偶者の方が「これは自分の家なのか」という感覚を持てないことがあります。
それは思っている以上に、不安として残ることがあります。
日常の中でふと気になったり、子どもの配偶者との関係性に気を使ってしまったり。
決して不仲とは言えない関係性であっても、「自分の名義ではない」という感覚は、生活に影響することがあります。
ただし、気持ちだけで決められる話でもない
一方で、もう一つ現実的に考えておくべき点もあります。
例えば将来的にその不動産を売却する可能性が高い場合には、子ども名義にしておくことが合理的な選択になることもあります。
名義を整理しておくことで、売却手続きがスムーズになるケースがあるためです。
また重要なのが、将来の判断能力の問題です。
万が一、名義人となった方が認知症を発症してしまった場合、自宅の売却は非常に難しくなります。
契約行為が制限されるため、成年後見制度などの手続きが必要になり、かかる時間や負担が大きくなることがあります。
だからこそ、「気持ちを優先することが常に正解」という単純な話ではありません。
相続の名義は、感情だけでもなく、手続きの効率だけでもなく、その両方を見ながら判断していく必要があります。
だからこそ大事なのは“知らずに決めないこと”
相続は、一度決めると後から修正が難しい場面もあります。
だからこそ、いくつかの選択肢があることを知った上で、その中から納得できる形を選ぶことが大事だと考えています。
知らなかったからその選択をした、という状態をできるだけ減らしたい。
それが私の考え方です。
最後に
相続の名義に、絶対的な正解はありません。
ただ、そのご家族にとっての納得できる形は必ずあります。
私はそのために、手続きの話だけではなく、その背景にある事情や気持ちも含めて整理しながら、一緒に考えていくことを大事にしています。
正解を探すというより、後悔しない選び方を一緒に考える仕事だと思っています。
もし同じように迷われている場合は、一度ご家族で話してみてください。
その上で整理が必要なときや、選択肢を整理したいときは、いつでもご相談いただければと思います。