「甥に手紙を送ったんですが、もう2か月経つのに何の返事もないんです」
以前、疎遠な相続人への連絡についてご相談いただいた方から、しばらくして再びこんな相談を受けました。
父親の代襲相続人にあたる甥に向けて、事情を説明する手紙を送ったものの、封筒が戻ってくることもなく、かといって連絡もない。
「無視されているんでしょうか。それとも、もう住んでいないんでしょうか」
相続人本人に悪意があるとは限りません。
突然、何年も連絡を取っていなかった親族から「相続のことで連絡したい」と手紙が届けば、どう返事をすればよいのか分からず、そのままにしてしまうこともあります。
だからといって、返事がないまま相続手続きを進められるわけではありません。
まずは「返事がない理由」を確認する
手紙を送ったのに返事がない場合、最初に確認したいのは、そもそも手紙が本人に届いているのかということです。
「あて所に尋ねあたりません」などとして手紙が戻ってきたのか、郵便物は届いているようだが本人から連絡がないのか、住所は分かっているが長期間返事がないのか、電話番号などほかの連絡手段も分からないのか。
状況によって対応は変わります。
冒頭のケースでは、手紙は戻ってきていませんでした。
つまり、その住所に届いている可能性が高い、という状態です。
「返事がない」というだけで、すぐに相続人が行方不明だと考える必要はありません。
手紙が戻ってきた場合
手紙が「あて所に尋ねあたりません」などとして戻ってきた場合には、その住所に現在も住んでいるのかを確認する必要があります。
引っ越しをしているのであれば、戸籍の附票などから新しい住所を調べられる可能性があります。
現在の住所が判明した場合には、改めてその住所に手紙を送ることになります。
手紙は届いているのに返事がない場合
住所に手紙が届いているようなのに、返事がない。
冒頭のケースがまさにこれでした。
この場合は、すぐに次の手続きへ進むのではなく、もう一度連絡を試みる方法があります。
最初の手紙から一定期間を置いて、再度手紙を送ります。
2通目の手紙では、先日手紙を送ったことに触れたうえで、亡くなった方、相続人として連絡していること、何について話をしたいのか、連絡してほしい方法を、改めて分かりやすく記載します。
最初の手紙よりも少し具体的に、「相続手続きを進めるために連絡が必要である」ということを伝えてもよいでしょう。
電話番号が分かっているなら、電話してもいい?
電話番号が分かっているのであれば、電話で連絡する方法もあります。
ただ、何十年も連絡を取っていない相手であれば、突然電話をすることに抵抗がある場合もあります。
そのような場合には、まず手紙で「お手紙をお送りしました。相続のことでお話ししたいことがありますので、ご都合のよいときにご連絡ください」と伝えたうえで、電話につなげる方法もあります。
相続人との関係や、これまでの経緯を考えて、連絡方法を選ぶことが大切です。
返事がないからといって、その人を外して協議はできない
ここは非常に重要です。
遺産分割協議をするのであれば、相続人全員が関与する必要があります。
「手紙を送ったけれど返事がない」「電話にも出ない」という理由だけで、その相続人を外して遺産分割協議書を作成することはできません。
相続人全員で話し合いができない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
法務省も、共同相続人間で協議が調わない場合だけでなく、協議をすることができない場合にも、家庭裁判所に遺産分割を請求できるとしています。
神戸家庭裁判所でも、遺産分割調停の申立てに必要な書類などが案内されています。

「返事がない=行方不明」ではありません
ここは区別が必要です。
手紙に返事がないからといって、直ちに「行方不明の相続人」ということにはなりません。
冒頭のケースの甥も、返事がないだけで、住所には住んでいる可能性が高い状態でした。
一方で、現在の住所が分からず、所在そのものが確認できない場合には、別の対応が必要になることがあります。
住所が分からないのか、住所は分かっているけれど返事がないのか。
ここを分けて考えることが大切です。
何度も手紙を送ればいいわけではありません
返事がないからといって、何度も同じ手紙を送り続ければよいというものでもありません。
相手との関係、相続財産の内容、不動産の有無、相続登記の必要性などによって、どこまで連絡を試みるのか、その後どう進めるのかを考える必要があります。
特に不動産がある場合には、相続登記の申請義務も関係してきます。
令和6年4月1日から相続登記が義務化されており、原則として、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
「返事が来るまで何年でも待つ」という対応が適切とは限りません。
連絡が取れないときは、次の手続きを考える
何度か連絡を試みても返事がなく、相続人全員で話し合うことができない場合には、遺産分割調停という方法があります。
ただし、これは「返事がないからすぐ調停」という単純な話ではありません。
相続人の住所が確認できているのか、手紙をどのように送ったのか、遺産の内容はどうなっているのかなど、これまでの経緯を整理したうえで、その後の対応を考える必要があります。
相続人の所在が分からない場合には、家庭裁判所での手続きに向けて、所在調査が問題になることもあります。
裁判所の案内でも、行方が不明な共同相続人について、関係者に照会する書面が用意されています。
「返事がない」からこそ、焦って進めない
疎遠な相続人に手紙を送っても返事がないと、「このまま相続手続きができないのでは」と焦ってしまいます。
しかし、まず確認するべきなのは、手紙が届いているのか、住所そのものが違っているのか、本人の所在が分からないのかという点です。
そのうえで、もう一度連絡を試みるのか、別の方法を検討するのかを判断します。
相続人が一人でも関与しないまま、遺産分割協議を成立させることはできません。
冒頭のケースも、まずは2通目の手紙を送るところから、次の一歩を考えることになりました。
だからこそ、連絡を取ろうとした経緯を整理しながら、相続の状況に応じて次の手続きを考えることが大切です。
高砂市・加古川市で、疎遠な相続人に連絡が取れない、手紙を送ったけれど返事がない、相続人の住所を確認したいといった相続のお悩みがありましたら、後藤司法書士事務所へご相談ください。
相続人の調査から、必要な書類の作成、相続手続きの進め方まで、現在の状況に応じてご案内します。