結論から言うと、相続登記をしていなくても固定資産税の納税通知書は届きます。市区町村は相続人代表者などに通知を送るため、「通知が来ないから大丈夫」ということはありません。
不動産を相続したものの、名義変更(相続登記)をしないまま放置しているというケースは少なくありません。固定資産税は、登記の有無にかかわらず毎年必ず課税されます。この記事では、相続登記をしないまま放置した場合に固定資産税の通知が具体的にどうなるのか、そしてどのようなリスクがあるのかを解説します。
固定資産税は「1月1日時点の所有者」に課税される
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されます。本来であれば、相続によって所有権が移転した時点で相続登記を行い、名義を新しい所有者に変更するのが原則です。
ところが相続登記をしないまま所有者が亡くなった場合、課税台帳上の名義は亡くなった人(被相続人)のままになってしまいます。この状態でも、市区町村は固定資産税を課税しないわけにはいかないため、何らかの形で相続人に納税通知書を送付する仕組みが用意されています。
未登記のままだと「相続人代表者」宛てに通知される
登記名義人が死亡し、相続登記がされていない不動産については、市区町村が相続人の中から「代表者」を指定し、その代表者宛てに納税通知書を送付する運用が一般的です。ただし具体的な手続きは自治体によって異なり、多くの市区町村では、死亡の事実を把握した際に相続人へ「相続人代表者指定届」の提出を求め、届出がない場合は職権で代表者を指定するといった運用がされています。
ここで注意したいのは、代表者だけが納税義務を負うわけではなく、相続人全員が納税義務者となるという点です。代表者はあくまで通知の受け取り窓口にすぎず、他の相続人にも法律上は納税義務が及びます。万一代表者が滞納すれば、他の相続人に対して督促や差押えなどの滞納処分が及ぶ可能性もあります。

「現所有者の申告制度」にも注意
2020年度の地方税法改正により、「現所有者の申告制度」が創設されました。これは、登記簿上の所有者が死亡しているにもかかわらず相続登記がされていない不動産について、実際にその不動産を所有している相続人が、氏名・住所などを市区町村に申告しなければならないという制度です。
申告をしなくても納税通知書自体は届くことが多いのですが、申告を怠ると自治体によっては過料の対象となる場合があります。固定資産税の通知が来ているからといって申告義務まで果たしているとは限らないため、この点は見落とされがちな落とし穴です。
放置することで生じる主なリスク
相続登記をせず、固定資産税の通知だけをそのまま受け取り続ける状態には、いくつかのリスクが伴います。
1. 相続人全員が納税義務者であり続ける 代表者以外の相続人であっても、遺産分割が終わっていなければ法定相続分に応じた納税義務から逃れることはできません。相続人の一人が引っ越しや連絡不通になると、通知が正しく届かず滞納につながることもあります。
2. 相続人が増え、手続きがどんどん複雑になる 相続登記をしないまま次の世代に相続が発生すると、権利関係を持つ相続人の数が増え、権利関係が複雑になっていきます。数次相続が重なると、遺産分割協議に必要な人数が数十人規模になることも珍しくなく、固定資産税の代表者選定すら困難になるケースがあります。
3. 不動産の売却・担保設定ができない 登記名義が被相続人のままでは、不動産を売却したり、金融機関の担保に入れたりすることができません。固定資産税を払い続けているのに、いざという時に不動産を活用できないという事態に陥ります。
4. 相続登記の義務化による過料のリスク 2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料が科される可能性があります。固定資産税の通知を受け取っているだけでは、この義務を果たしたことにはならない点に注意が必要です。
5. 通知が届かなくなるケースもある 相続人の住所が把握できない場合や、代表者として指定された人がその後転居・死亡した場合など、自治体から通知の送付先を確認するために問い合わせを受けることがあります。「通知が届いていないから納税義務もない」と思い込んで放置すると、実際には滞納扱いになっているというケースもあるため注意が必要です。
まとめ:通知が届くことと、問題が解決していることは別問題
相続登記をしなくても、市区町村は相続人代表者や現所有者からの申告をもとに固定資産税の通知を送り続けます。しかし、これはあくまで課税上の便宜的な対応であり、根本的な所有権の問題を解決するものではありません。相続人全員が納税義務者であり続けること、相続人の増加、不動産の売却制限、そして相続登記義務化による過料リスクなど、放置することのデメリットは年々大きくなっていきます。
固定資産税の通知が届いているものの、相続登記がまだ済んでいない場合は、できるだけ早めに手続きを進めることが大切です。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。