「家の中を探しても、親が何を契約していたのか全然分からないんです」
相続の相談で、こう話される方がいました。
親が亡くなってから実家を片付けていると、銀行からの郵便物、生命保険の書類、証券会社からの通知、不動産関係の書類が、いろいろな場所から次々に出てきたそうです。
「これは何の書類?」
「この保険はまだ契約しているの?」
「この銀行に口座があるの?」
一つずつ確認していくだけでも、かなりの時間がかかります。
結局、すべての契約や財産を把握するまでに2か月近くかかり、そのあいだ相続手続きも進められなかったといいます。
しかも、書類が見つからないと、そもそも契約や財産の存在に気づけないこともあります。
終活というと、遺言書を作ったり、不要な物を処分したりすることを思い浮かべる方が多いでしょう。
でも、「家族が後から必要になる情報を整理しておくこと」も、終活の一つです。
まずは「どんな財産があるか」が分かるようにする
最初に整理しておきたいのが、財産に関する書類です。
預貯金の通帳・キャッシュカード、証券会社からの取引報告書、生命保険・損害保険の保険証券、不動産の登記事項証明書や固定資産税の通知書、借入れに関する書類、年金に関する書類。
すべてをファイルに綺麗にまとめる必要はありません。
「銀行関係はこの引き出し」「保険関係はこのファイル」というように、家族が見つけられる状態にしておくだけでも意味があります。
「書類がある」だけでは分からないこともある
最近は、紙の書類が残らないサービスも増えています。
ネット銀行やネット証券などは、郵送物がほとんどなく、スマートフォンやパソコンからしか確認できないこともあります。
「通帳がないから、この銀行は使っていないだろう」とは限りません。
利用している金融機関や証券会社について、名称だけでも一覧にしておくと、家族が確認しやすくなります。
パスワードを紙に書いて保管しておくことまで勧める必要はありません。
むしろ、パスワードそのものは慎重に管理し、「どのサービスを利用しているか」だけを分かるようにしておくという方法もあります。
保険は「契約しているかどうか」だけでも伝えておく
生命保険についても、家族が把握していないことがあります。
「昔入った保険だから、今も続いているか分からない」というケースもあります。
冒頭の相談者のケースでも、片付けの最中に、本人も忘れていたらしい古い養老保険の証券が出てきて、まだ有効な契約かどうかの確認から始める羽目になりました。
保険証券や契約内容のお知らせから、保険会社、保険の種類、契約者、被保険者、受取人が分かる状態にしておくと、後の確認がしやすくなります。
保険金の請求には手続きが必要になるため、契約そのものを家族が知らないと、請求にたどり着けないことがあります。

不動産関係の書類もまとめておく
自宅や土地などの不動産を所有している場合には、不動産関係の書類も整理しておきたいところです。
固定資産税の納税通知書、登記識別情報通知や権利証、売買契約書、住宅ローンに関する書類。
こうした書類が一か所にまとまっていれば、相続が始まった後の確認がしやすくなります。
特に、遠方に住む子どもが相続手続きをする場合には、どこに何があるのか分かるだけでも負担が変わります。
「借金」や「保証人」も忘れずに
終活というと、財産を残すことばかり考えがちです。
しかし、相続ではプラスの財産だけでなく、借入れなどのマイナスの財産も問題になります。
住宅ローン、自動車ローン、カードローンなどがある場合には、その契約書や利用明細なども整理しておきたいところです。
亡くなった後になって借入れが判明すると、相続人が対応を考える必要が出てきます。
また生前に誰かの保証人になったことがあるなど、今は目に見えない借金の可能性であっても情報があるのとないのでは全く状況が変わってきます。
相続放棄には期間の制限があるため、借金の存在を把握できるようにしておくことは重要です。
「どこにあるか」を家族に伝えておく
書類を整理するときに大切なのは、完璧なファイルを作ることではありません。
むしろ、「何がどこにあるのか、家族が分かる状態にする」ことです。
「重要書類は寝室のクローゼットの上段」「保険関係は青いファイル」「不動産関係は机の引き出し」という程度でも構いません。
本人しか分からない場所に大切な書類をしまっておくと、亡くなった後に家族が探し回ることになります。
エンディングノートに全部書く必要はない
こうした情報をまとめる方法として、エンディングノートを使う方もいます。
エンディングノートには決まった形式があるわけではないので、自分が分かりやすい形で整理して構いません。
ただし、エンディングノートだけで財産の行き先を決めることはできません。
「自宅は長男に相続させたい」「預貯金は子どもで分けてほしい」といった財産についての希望を法的に残したいのであれば、遺言書を作成する必要があります。
エンディングノートは情報整理や希望を伝えるためのもの、遺言書は財産の行き先などを法的に決めるもの、と役割を分けて考えると分かりやすいでしょう。
「全部まとめなければ」と考えなくていい
終活の書類整理というと、「すべての書類を一冊にまとめないといけない」と思うかもしれません。
そこまで完璧にする必要はありません。
まずは、①銀行・証券、②保険、③不動産、④借入れ、⑤重要な契約。
このあたりについて、「何があるのか」「どこにあるのか」が分かるようにしておけば十分です。
その後、生活状況や財産が変わったら、内容を更新していけばいいでしょう。
書類を整理することは、家族の負担を減らすこと
終活というと、遺言や相続対策のような大きな準備を思い浮かべるかもしれません。
でも、家族にとって助かるのは、意外とこうした小さな整理だったりします。
「銀行はここ」「保険はこれ」「不動産の書類はここ」「借入れはこれ」。
それが分かるだけで、亡くなった後の家族の負担は大きく変わります。
冒頭の相談者も、「最初からこの一覧があれば、あの2か月はいらなかった」と話していました。
書類を整理していると、自分自身が「こんな保険に入っていた」「この口座はもう使っていない」と気づくこともあります。
終活の第一歩として、まずは家の中にある重要書類を一度確認してみてはいかがでしょうか。
高砂市・加古川市で、終活、遺言、相続、任意後見、死後事務委任などについてお考えの方は、後藤司法書士事務所にご相談ください。