〒676-0022 兵庫県高砂市高砂町浜田町2丁目7-52 ロイヤルコーポ高砂201号

MENU

後藤司法書士事務所

営業時間
9:00-18:00

土日祝・夜間
対応可

079-
490-
7322

Scroll

義父母を介護しても遺産はもらえない?「特別の寄与」の限界と生前対策を解説

義父母を介護しても遺産はもらえない?「特別の寄与」の限界と生前対策を解説

「結婚してからずっと義理の両親と同居し、20年近く生活をともにしてきました。年を重ねて要介護状態になってからは、8年、10年と付き添ってきたのに、いざ相続が始まると、疎遠だった配偶者の兄弟姉妹(他の相続人)が遺産を分け合い、自分には何の権利もないと言われた——」

このような相談は、相続の現場で決して珍しくありません。日本の相続制度では、遺産を受け取れるのは配偶者や子など、法律上の「相続人」だけです。相続人の妻や夫(義理の息子・娘の配偶者)は、どれだけ長く同居し、献身的に義父母の介護をしても、法律上は相続人にあたらないため、遺産分割の場に立つことすらできませんでした。

この不公平を見直すために2019年から始まったのが「特別の寄与」という制度です。ただし、結論から言うと、この制度は万能ではありません。今回は、制度の背景から実際の限界、そして本当に備えるべき方法まで、順を追って解説します。


なぜこの制度ができたのか

以前から、相続人であれば「寄与分」という形で、被相続人(亡くなった方)への貢献を遺産分割に反映させる仕組みがありました。しかし、これはあくまで相続人だけに認められた権利です。実際に介護を担うことも多かった「息子の妻」や「娘の夫」は、相続人ではないという理由だけで、この制度の対象外とされていました。

その結果、「介護への関与が少なかった実の子どもは法定相続分どおり遺産を受け取り、長年つきっきりで介護をしてきた嫁や婿には1円も渡らない」という事態が各地で起きていました。国会でもこうした不公平が問題視され、2018年の相続法改正によって「特別の寄与」の制度が新設され、2019年7月1日から施行されています。相続人以外の親族の貢献にも、初めて法的な光が当たることになったのです。


制度の内容

相続人ではない親族(配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族)が、被相続人の療養看護などによって財産の維持・増加に貢献した場合、相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求できる制度です(民法1050条)。相続人の妻・夫は「3親等の姻族」にあたるため、要件を満たせば対象になります。


「寄与分」との違い

似た言葉に「寄与分」がありますが、両者は別の制度です。

寄与分特別寄与料
主張できる人相続人相続人以外の親族
主張する場遺産分割協議・調停の中で遺産分割とは別に、相続人へ直接請求
期間の制限明確な期限なし(遺産分割終了まで)相続開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年
請求の相手他の共同相続人各相続人(法定相続分に応じて負担)

このように、特別寄与料は寄与分の「相続人以外」への拡張版という位置づけですが、期間の短さなど、寄与分にはない制約も抱えています。


認められるための要件

特別寄与料が認められるには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。

  1. 被相続人の親族であり、相続人ではないこと
  2. 療養看護などの労務を「無償」で提供したこと
  3. その労務が一時的・短期間ではなく、継続的・長期間にわたっていたこと
  4. その結果として、被相続人の財産の維持または増加につながったこと

単に「よく顔を出していた」「たまに家事を手伝った」という程度では認められません。裁判例でも、面会や手続きの代行にとどまる関与は「特別の寄与」に該当しないと判断されたケースがあります。


なぜ認められるハードルが高いのか

制度ができたとはいえ、実際に認められるのは簡単ではありません。理由はいくつかあります。

立証責任が請求する側にあること。 「無償で」「継続的に」「財産の維持に貢献した」ことを、介護日誌や医療記録などの客観的な資料で示す必要があります。感覚的には十分尽くしたつもりでも、書面として残っていなければ、裁判所や相手方を説得する材料になりません。

「親族としての通常の助け合い」との線引きが厳しいこと。 同居する家族が食事の世話をしたり、通院に付き添ったりすることは、ある程度は親族間の通常の協力の範囲とみなされがちです。特別寄与料が想定しているのは、それを明らかに超える負担、たとえば仕事を辞めて介護に専念した、専門的な介護を長期間続けたといった、通常の助け合いの範囲を超える貢献です。この判断は、以前から相続人に認められてきた「寄与分」の考え方が参考にされているため、扶養義務のない親族であっても、判断基準そのものはかなり厳格に運用されています。

相続人側の抵抗が強いこと。 特別寄与料が認められれば、相続人が受け取る遺産はその分減ります。当然、簡単には合意してもらえず、交渉が難航しやすい制度です。


認められても、金額が期待ほど高くない理由

仮に請求が認められても、想像していたほどの金額にならないことも少なくありません。主な理由は次のとおりです。

裁量割合による目減り。 介護の場合の計算式は「日当額 × 療養看護日数 × 裁量割合」です。ここでいう裁量割合とは、プロのヘルパーではなく親族が行った介護であることなどを考慮して、金額を圧縮するための係数です。実務上、このような係数を用いて検討されることがあり、単純にプロに頼んだ場合の費用がそのまま認められるわけではありません。

上限があること。 特別寄与料の額は、被相続人が亡くなった時点で残っていた財産の額を超えることができません(民法1050条4項)。財産があまり残っていなければ、どれだけ貢献していても、請求できる金額には限界があります。

複数の相続人で分散して負担すること。 相続人が複数いる場合、それぞれが自分の法定相続分に応じた分だけを負担します(同条5項)。相続人1人に全額を請求できるわけではありません。

相続税がかかること。 特別寄与料を受け取ると、遺贈を受けたものとみなされて相続税の課税対象になります。相続人の配偶者や1親等の血族以外の人が財産を取得した場合には、相続税額が2割加算されるルールがあり、特別寄与者の多くはこの対象になります。


具体例で見てみる

たとえば、義母を8年間、要介護3~4程度の状態で在宅介護してきたケースを考えてみます。プロのヘルパーに依頼した場合の日当を8,000円、実際に介護に費やした日数を延べ600日、裁量割合を0.5とすると、

8,000円 × 600日 × 0.5 = 240万円

という計算になります。しかし、これはあくまで交渉のたたき台であり、相続人との協議や裁判所の判断で減額されることも珍しくありません。相続人が子2人であれば、それぞれが120万円ずつを負担することになり、さらにここから相続税(2割加算込み)が差し引かれます。8年間という長い年月の労力を考えると、決して十分な金額とは言えないケースも多いのが実情です。

なお、この計算方法はあくまで一例であり、実際には介護の内容や期間、被相続人の財産額など様々な事情を踏まえて個別に判断されるため、この金額がそのまま認められるわけではありません。


「特別の寄与」だけに期待してはいけない

ここまで見てきたように、特別寄与料には、①短い期間制限、②厳格な要件、③相続人の抵抗、④想定より低くなりがちな金額という、いくつもの壁があります。制度ができたことで「泣き寝入りするしかない」という状況は改善されましたが、これだけを頼りにするのは危険です。

特別の寄与制度は、あくまで相続が始まった後の救済制度です。一方で、これからご紹介する生前対策は、そもそも「特別の寄与に頼らなくても済む状態」をあらかじめ作っておくためのものです。「相続が始まってから、この制度で何とかしよう」ではなく、義父母がご存命のうちに、確実な形で気持ちを残しておくことこそが、本当の意味での備えになります。


生前にできる対策

① 遺言

もっとも一般的な方法は、義父母ご自身に遺言書を作成してもらうことです。「お世話になった〇〇さんに、感謝の気持ちとして財産の一部を遺贈する」と明記してもらえれば、特別寄与料のように相続人との交渉に頼る必要がなくなります。

ただし、遺言には弱点もあります。遺言はいつでも本人の意思だけで撤回・書き換えができるものです(民法1022条)。後から気が変わったり、他の家族に説得されたりして、新しい遺言に書き換えられてしまえば、それだけで内容は覆ります。「遺言を書いてもらえたから安心」と思っていても、最終的にどの遺言が有効になるかは、亡くなるまで分からないという不安定さが残ります。

② 生前贈与

遺言に頼らず、元気なうちに財産を分けてもらう方法です。年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない「暦年課税」が基本になります。

なお、生前贈与の制度としては「相続時精算課税制度」もありますが、この制度を使えるのは、贈与者から見て「推定相続人」または孫にあたる人に限られます。相続人の妻や夫は、義父母と養子縁組でもしない限り推定相続人にはあたらないため、原則としてこの制度は利用できません。生前贈与を検討する場合は、暦年課税が基本になる点に注意してください。

一方で、暦年課税には見落とされがちな利点もあります。相続開始前の一定期間(現在は最長7年)に受けた贈与は、原則として相続財産に「持ち戻され」相続税の対象になりますが、これは「相続や遺贈によって財産を取得した人」が対象です。つまり、実の子どもへの生前贈与よりも、税務上は有利に働く場面があるということです。

ただし、これはあくまで「相続人ではなく、遺贈も受けていない」場合に限られる話です。義父母の遺言で財産を遺贈してもらったり、特別寄与料を受け取ったりする場合には、その方については通常どおり持ち戻しの対象になり得るため、この利点は生前贈与だけで完結させる場合の話だと理解しておいてください。

③ 負担付死因贈与契約

あまり知られていませんが、遺言よりも確実性の高い方法として「負担付死因贈与契約」があります。

死因贈与とは、「私が亡くなったら、この財産をあなたに贈与します」という、贈与者の死亡を条件とする契約です。遺言があくまで本人の一方的な意思表示であるのに対し、死因贈与は受け取る側との間で結ぶ「契約」である点が大きく異なります。

さらに「負担付」とは、「介護をしてくれることを条件に」といった義務(負担)を受贈者に課す形の死因贈与です。ここが重要なポイントで、負担付死因贈与契約は、受贈者がすでに負担の全部またはそれに近い程度を履行している場合、贈与者が一方的に撤回することが原則としてできないとされています(最高裁昭和57年4月30日判決)。つまり、長年介護を続けてきた実績があれば、義父母が後から気持ちを変えて一方的に契約を反故にすることが難しくなるのです。この「撤回されにくさ」こそが、遺言に対する最大の優位点です。

また、不動産を対象とする場合には、契約の時点で「始期付所有権移転仮登記」をしておくことができ、後から他の相続人に財産を処分されてしまうリスクも抑えられます。

このように、確実性を重視するなら負担付死因贈与契約、手軽さを重視するなら遺言、というように、状況に応じて使い分ける、あるいは組み合わせて検討することが大切です。


司法書士に相談するメリット

こうした生前対策は、法律・税務の両面にまたがる専門的な話であり、自己流で進めると後から思わぬ落とし穴に気づくことも少なくありません。特に司法書士は、次のような点で心強い相談先になります。

  • 公正証書遺言の文案作成や、証人の手配など、有効性の高い遺言づくりをサポートできること
  • 遺言だけでなく、負担付死因贈与契約や生前贈与も含めて、ご家庭の状況に合った方法を比較しながら提案できること
  • 負担付死因贈与契約の契約書作成や、不動産の仮登記手続きなど、契約と登記の両方に精通していること
  • 将来、相続が発生した際の相続登記や名義変更まで、生前から死後まで一貫して対応できること
  • 家族信託や任意後見など、遺言や死因贈与以外の選択肢も含めて、総合的に提案してもらえること

相続人同士の対立がすでに深刻化している場合は弁護士による交渉が必要になりますが、「まだ元気なうちに、争いにならない形を整えておきたい」という生前対策の段階では、司法書士に相談することで、比較的費用を抑えながら手続きを進められることが多いのも利点です。


おわりに

介護は、お金のためにするものではありません。それでも、長年尽くしてきた思いが、何の備えもなかったために報われないのは、あまりに残念なことです。「特別の寄与」はいざというときの最後の手段として知っておきつつ、本当に安心できる形にしたいのであれば、義父母が元気なうちに、遺言や負担付死因贈与契約といった具体的な備えをしておくことをお勧めします。相続に関して不安や疑問がある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

FREE CONSULTATION

まずはお気軽にご相談ください

相談は何度でも無料。出張相談も無料です。

電話番号

WEB予約

LINE

電話番号

WEB予約

LINE

Copyright © 高砂・加古川の相続・遺言なら後藤司法書士事務所