「山のふもとにある実家の土地、正直どうしていいか分からなくて」
相続の相談で、こう話される方がいました。
亡くなった父親が住んでいたのは、駅から車で20分ほどの、築50年近い木造の家。
すでに空き家になって3年ほど経ち、庭は雑草だらけ、屋根の一部も傷み始めていたそうです。
固定資産税の納税通知書を見ると、毎年数万円の負担がかかっている。
「売れるものなら売りたいけれど、こんな場所の家、買う人なんているんでしょうか」
こうした「持っていても使わない不動産」は、一般に負動産と呼ばれることがあります。
いきなり「売る」「壊す」と決めるのではなく、まずその不動産がどのような状態なのかを確認することが大切です。
まず、その不動産がどんなものなのか確認する
最初に確認したいのは、相続した不動産そのものです。
土地なら所在地、地目、面積、接道状況、利用状況。
建物なら建築年、現在の状態、誰かが利用しているか、空き家になっている期間。
「実家の土地だから分かっている」と思っていても、登記上の面積と実際の土地の状況が違っていたり、隣接地との境界がはっきりしていなかったりすることもあります。
冒頭のケースでも、改めて確認してみると、自宅の裏手に、本人も存在を知らなかった小さな畑がもう一筆あることが分かりました。
固定資産税の納税通知書や名寄帳なども確認し、所有している不動産を一度整理してみましょう。
登記上の名義を確認する
次に確認したいのが、その不動産の名義です。
相続した不動産であれば、亡くなった方の名義になっていることが多いでしょう。
ただし、古い不動産では、何代も前の名義のままになっていることがあります。
相続人が複数いる場合には、共有状態になっていることもあります。
不動産を売却したり処分したりする場合には、誰が所有者なのかが重要になるため、登記事項証明書を取得して、現在の所有者や共有関係、抵当権などの権利関係を確認しておきましょう。
相続登記がまだ済んでいない場合には、処分方法を考える前に、まず相続登記について検討する必要があります。
固定資産税や管理の負担を確認する
負動産を所有することで、どのくらいの負担が生じているのかも確認しておきましょう。
代表的なのが固定資産税です。
土地や建物を所有していれば、原則として毎年課税されます。
さらに、空き家であれば、草刈り、庭木の剪定、建物の修繕、清掃、定期的な見回りなどの管理も必要になります。
冒頭のケースも、固定資産税に加えて、年に数回の草刈りを近所の業者に頼んでおり、それだけで年間数万円がさらにかかっていました。
遠方に住んでいる場合には、自分で管理することが難しく、管理業者などに依頼する費用が発生することもあります。
「今すぐ売れないから、とりあえず持っておこう」と考える場合でも、年間どの程度の負担がかかるのかを把握しておくことが大切です。

本当に「売れない不動産」なのか確認する
負動産という言葉から、「売れない土地だから処分するしかない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、売れるかどうかは不動産によって異なります。
同じ古い家でも、駅や商業施設に近い土地なら買い手が見つかる可能性があります。
反対に、道路に十分接していない、境界が不明確、建物が老朽化している、市街化調整区域にある、農地や山林であるといった事情によって、売却が難しくなることもあります。
「負動産だから売れない」と最初から決めつけるのではなく、不動産会社などに売却の可能性を確認してみることが重要です。
売却価格だけでなく、解体費用や測量費用なども含めて考える必要があります。
そのまま放置しても大丈夫なのか考える
使う予定がない不動産でも、所有している限り、何もしなくてよいとは限りません。
特に空き家の場合、長期間放置すると建物の老朽化が進みます。
庭が荒れたり、害虫が発生したり、屋根や外壁が傷んだりすれば、近隣への影響が生じることもあります。
さらに、空き家対策の法律のもとでは、状態によって「管理不全空家」や「特定空家」に指定される可能性もあります。
指定されると、自治体からの指導や勧告の対象になったり、固定資産税の優遇がなくなったりすることがあります。
冒頭のケースの家も、あと数年放置すれば屋根が抜け落ちかねない状態で、こうした指定と無縁とは言えない状況でした。
管理不全空家・特定空家については、指定された場合にどうなるのかも含めて、別の記事で詳しく解説しています。
「誰も住んでいないから、そのままでいい」と考えるのではなく、今後も所有し続けるのか、売却するのか、解体するのかなどを早めに検討しておきましょう。
確認したうえで、どうするかを決める
ここまで確認すると、その不動産について取れる選択肢が見えてきます。
売却できそうなら売却する。
建物が古く、そのままでは売りにくいなら、解体して土地として売却する方法を検討する。
すぐに処分できないなら、適切に管理しながら保有する。
また、一定の要件を満たす土地については、相続土地国庫帰属制度を利用して国に引き渡す方法もあります。
ただし、この制度には対象となる土地の要件や費用があり、誰でも無条件に使えるわけではありません。
大切なのは、「負動産だからどうしよう」と考えるだけで終わらず、その不動産の状態を確認して、選択肢を一つずつ検討することです。
まとめ|負動産を相続したら、まず現状を確認しましょう
負動産を相続したとき、最初から「売る」「解体する」「国に引き取ってもらう」と決める必要はありません。
どんな不動産なのか、誰の名義になっているのか、固定資産税や管理費はいくらか、売却できる可能性があるのか、このまま所有し続けることに問題がないか。
まずはこれを確認しましょう。
冒頭のケースも、こうして一つずつ整理していく中で、「まずは相続登記を済ませてから、不動産会社に一度見てもらう」という現実的な次の一歩が見えてきました。
そのうえで、売却・解体・保有・相続土地国庫帰属制度など、自分の不動産に合った方法を検討します。
相続した不動産の名義や相続関係が複雑になっている場合は、司法書士に相談することで、現在の権利関係を整理することもできます。
高砂市・加古川市で相続した不動産についてお困りの方は、後藤司法書士事務所までご相談ください。