「財産はたいしたことないから、終活なんて必要ないと思っていました」
以前、そう話されていた方がいました。
預貯金は数百万円ほど、自宅も普通の一戸建て。
子どもは2人で、仲もいい。
「相続でもめるような財産はないし、自分が死んだ後のことは何とかなるでしょう」
そう考えていたそうです。
ところが、実際に話を聞いていくと、その方が気にしていたのは財産の金額ではありませんでした。
「もし認知症になったら、誰に何を頼めばいいのか」
「施設に入ることになったら、この家はどうするのか」
「亡くなった後の手続きは、誰に頼むのか」
聞けば聞くほど、財産の分け方より、こちらのほうが気がかりだったようです。
終活というと、「財産をどうするか」から考え始める方が多いと思います。
しかし最初に考えておきたいのは、「お金を誰に残すか」より、「自分ができなくなったとき、どうするか」かもしれません。
財産が少なくても、困ることはある
「うちは財産が少ないから、相続の準備は必要ない」
そう考えるのは、少し危険です。
預貯金が数百万円と自宅だけだったとしても、その自宅をどうするのかという問題は残ります。
認知症などによって判断能力が低下すると、本人だけで不動産を売却することが難しくなります。
子どもが代わりに売ればいいと思っていても、親子だからという理由だけで、親の財産を自由に処分できるわけではありません。
「財産が多いか少ないか」ではなく、本人が判断できなくなったときに、誰がどう対応するのかが問題になるのです。
まず「自分でできなくなったとき」を考える
終活で最初に考えたいのは、「自分で判断したり、手続きをしたりできなくなったら、誰に頼むか」ということです。
認知症などによって判断能力が低下すると、預貯金の管理、不動産の管理や処分、介護サービスの契約など、自分だけでは対応できなくなることがあります。
その段階になってから対応するとなると、家庭裁判所に申立てをして成年後見人を選んでもらうところから始めることになります。
元気なうちに任意後見契約を結んでおけば、将来判断能力が低下したときに備えて、財産管理などを任せる人を自分で決めておくことができます。
「子どもに任せたい」「信頼できる人に頼みたい」と思っているなら、その希望を元気なうちに形にしておくことが大切です。
「住む場所」をどうするか
次に考えたいのが、これからどこで暮らすかです。
今は自宅で元気に生活していても、将来、介護が必要になったり、施設への入所を検討したりすることがあります。
そのとき、「自宅はどうする?」という問題が出てきます。
売却するのか、子どもが管理するのか、そのまま残すのか。
判断能力が低下してからでは、成年後見人がついていても、本人が住んでいた不動産の売却には原則として家庭裁判所の許可が必要になり、自分の意思だけでは決められなくなります。
「できるだけ自宅で暮らしたい」という希望も、「施設に入ることになったら自宅を売って費用に充てたい」という希望も、元気なうちなら自分で考えて決めることができます。
亡くなった後のことは「財産」だけではない
終活というと、「誰に財産を残すか」という話になりがちです。
もちろん、それも大切です。
ただ、亡くなった後に必要になるのは相続手続きだけではありません。
葬儀や納骨、公共料金や携帯電話の解約、賃貸住宅の明渡し、自宅の片付け、遺品整理。
こうした手続きを誰がするのかも考えておく必要があります。
家族が近くに住んでいれば、自然と対応してくれるかもしれません。
しかし、子どもが遠方に住んでいる場合や、身寄りが少ない場合には、誰が動くのかを決めておいたほうが安心です。
亡くなった後の事務を第三者に依頼しておく方法として、死後事務委任契約があります。

「誰に財産を残すか」は、その後に考える
もちろん、財産の行き先も終活では重要です。
「妻に残したい」「子どもたちに公平に分けたい」「特定の人に残したい」「お世話になった団体に寄付したい」など、希望は人それぞれです。
こうした希望を明確にしておきたい場合には、遺言書を作成する方法があります。
特に、家族構成が複雑だったり、法定相続人以外の人に財産を残したいと考えていたりする場合には、遺言書が重要になります。
ただし、ここでも大切なのは財産の金額の大小ではありません。
自分の財産を、誰に、どのように残したいのか。
そこを自分の言葉で整理しておくことです。
終活で大切なのは「制度を選ぶこと」ではない
ここまで読むと、「任意後見も遺言も死後事務委任も必要なの?」と思うかもしれません。
もちろん、すべてを準備する必要はありません。
判断能力が低下したときの財産管理を考えるなら任意後見。
家族に財産の管理や処分を託したいなら家族信託。
亡くなった後の手続きを誰かに頼みたいなら死後事務委任。
財産の行き先を決めておきたいなら遺言。
それぞれ役割が違います。
大切なのは、最初から制度を選ぶことではなく、「自分がこれから先、何に困りそうなのか」を考えることです。
冒頭の相談者も、財産の分け方より先に、この点を一つずつ整理していきました。
お金が少ないからこそ、考えておきたいこともある
終活は、財産が多い人だけのものではありません。
むしろ、財産が自宅と預貯金だけという方でも、「認知症になったら誰が手続きをするのか」「施設に入ったら自宅をどうするのか」「亡くなった後の片付けは誰がするのか」といった問題は起こります。
だからこそ、終活を「相続財産の分け方」だけで考える必要はありません。
自分が元気なうちに、これからの生活と、その後のことを整理しておく。
それが終活の大切な役割です。
「財産はたいしたことないから」と考えている方も、一度、自分ができなくなったときのことまで考えてみてはいかがでしょうか。
高砂市・加古川市で、終活、遺言、任意後見、家族信託、死後事務委任などについてお考えの方は、後藤司法書士事務所にご相談ください。