相続手続きを進める中で、「遺産分割協議書を作成してください」と言われる場面があります。
最近ではインターネットで「遺産分割協議書 ひな形」と検索すると、多くの無料テンプレートが公開されており、「これを使えば自分でも作れそう」と考える方も少なくありません。
実際、ひな形は遺産分割協議書がどのような書類なのかを知るうえでは参考になります。
しかし、相続の内容は家庭ごとに異なります。そのため、ネット上のひな形をそのまま使用すると、後から修正が必要になったり、手続きが進まなくなったりすることがあります。
今回は、遺産分割協議書を作成する際に知っておきたいポイントをご紹介します。
遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、相続人全員で「誰がどの財産を相続するのか」を話し合い、その内容を書面にまとめたものです。
相続人全員が内容に合意し、署名(または記名)と実印で押印することで完成します。
この書類は、不動産の相続登記や金融機関での相続手続きなど、さまざまな場面で提出を求められます。
相続手続きを進めるうえで、とても重要な書類の一つです。
ひな形はあくまでも「参考例」です
インターネットに掲載されているひな形は、多くの場合、一般的なケースを想定して作られています。
しかし、実際の相続では、
- 不動産が複数ある
- 預貯金口座が複数ある
- 株式や投資信託を所有している
- 相続人が遠方に住んでいる
など、それぞれ事情が異なります。
そのため、ひな形をそのまま使用すると、自分のケースには合わないことも少なくありません。
実際に、「インターネットで見つけたひな形を使って遺産分割協議書を作成し、相続人全員に署名・押印をもらいました。」というご相談を受けることがあります。
ところが、内容を確認すると、そのままでは相続登記に使用できないケースもあります。
結局、遺産分割協議書を作り直すことになり、相続人全員にもう一度署名・押印をお願いしなければならなくなったこともありました。
一度全員から署名・押印をもらった書類を作り直すのは、ご本人にとっても相続人の皆様にとっても大きな負担です。
不動産がある場合は記載方法が特に重要です
司法書士としてご相談を受けていると、不動産の記載方法で困っている方は少なくありません。
遺産分割協議書には、「自宅」や「実家」と記載するのではなく、登記事項証明書どおりに正確に記載する必要があります。
例えば、
- 所在
- 地番
- 地目
- 地積
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
など、登記されている内容を正確に記載します。
住所と地番は異なりますので、「住所を書けばよい」と思っていると、手続きが進まない原因になることがあります。
また、マンションの場合は、建物だけでなく土地の権利(敷地権)についても正しく記載する必要があります。
実際にご相談を受ける中でも、インターネットのひな形を参考に作成した遺産分割協議書では、建物の記載はあるものの、敷地権の記載が漏れているケースを見かけることがあります。
このような場合、そのままでは相続登記を進めることができず、遺産分割協議書の作り直しが必要になることもあります。
記載内容によっては手続きが止まることもあります
遺産分割協議書は、一文字違えば無効になるような書類ではありません。
しかし、財産の特定ができなかったり、誰が何を取得するのかが曖昧だったりすると、法務局や金融機関から修正を求められることがあります。
場合によっては、相続人全員から改めて署名・押印をいただかなければならないケースもあります。
相続人が遠方に住んでいる場合などは、そのやり取りだけでも大きな負担になります。
最初に正確な内容で作成しておくことが、結果的に時間と手間を減らすことにつながります。
相続人全員の合意が必要です
遺産分割協議書は、一人だけで作成できるものではありません。
法律上の相続人全員が内容に合意し、署名(または記名)と実印で押印する必要があります。
もし相続人が一人でも漏れていた場合、その遺産分割協議は成立しません。
そのため、まず戸籍を確認し、法律上の相続人を正確に特定することが大切です。
協議書を作ることだけでなく、その前提となる相続人の確認も非常に重要です。
ネットのひな形は参考資料として活用しましょう
ネット上のひな形は、遺産分割協議書がどのような書類なのかを知るためには、とても参考になります。
一方で、そのまま自分の相続に当てはめられるとは限りません。
相続財産の内容や相続人の状況によって、記載すべき内容は変わります。
特に不動産が含まれている場合は、相続登記まで見据えて作成することが重要です。
まとめ
遺産分割協議書は、相続手続きを進めるうえで欠かせない重要な書類です。
インターネットのひな形は便利ですが、すべての相続に対応できるものではありません。
特に不動産が含まれている場合は、財産の表示方法や記載内容によって、その後の相続登記に影響することがあります。
「この書き方で大丈夫だろうか」「ひな形をそのまま使って問題ないだろうか」と迷ったときは、一度専門家へ相談することをおすすめします。
最初に内容を確認しておくことで、遺産分割協議書の作り直しや、相続人全員に再度署名・押印をお願いするといった負担を避けられる可能性があります。
少しの確認が、その後の相続手続きをスムーズに進めることにつながります。