「遺言書のハンコがいらなくなるらしい」――そんなニュースを見て、気になった方も多いのではないでしょうか。
自筆証書遺言の押印要件を見直す民法改正が成立し、押印が不要となる方向で制度が見直されました。
これまで遺言書には押印が必要というイメージを持たれていた方にとっては、大きな変更と言える内容です。
では、今後は本当に押印をしなくてもよいのでしょうか。
当事務所では、法改正後も引き続き遺言書への押印をおすすめしたいと考えています。
今回は、その理由についてご説明します。
今回の法改正とは?
これまで、自筆証書遺言には本文を自書することに加え、押印することが法律上の要件とされていました。
今回の改正により、この押印要件が見直され、押印がなくても自筆証書遺言として有効となる方向で制度が変更されました。
この見直しは、遺言書をより作成しやすくし、遺言制度の利用を促進することを目的としています。
高齢化が進む中で、遺言を残すことのハードルを下げる意義がある改正と感じています。
押印が不要になっても、押印をおすすめする理由
今回の改正は「押印をしてはいけない」というものではなく、「押印がなくても有効になる」という改正です。
そのため、法改正後も押印すること自体は可能です。
当事務所では、法改正後も引き続き押印をおすすめします。
その理由は、押印があることで「本人の意思にもとづいて遺言書を作成した」という事情の一つとなり得ること、そして押印することによるデメリットがほとんどないためです。
もちろん、押印だけで遺言書の有効性が決まるわけではありません。
しかし遺言書は、ご本人が亡くなった後に初めて効力を生じるものです。
そのため、「本当に本人が作成した遺言なのか」「本人に最終的な意思があったのか」といった点が問題になることがあります。
押印はそれらを完全に防ぐものではありませんが、将来の疑問や紛争を減らす一つの要素になると考えています。
また、法改正後も押印することによる大きな負担や不利益は通常ありません。
「法律上不要」と「押印しない方がよい」は意味が異なります。
安心という観点から見れば、あえて押印しない理由はほとんどないといえます。
本当に重要なのは、押印よりも遺言書の内容です
もっとも、相続で問題になるのは押印の有無よりも、遺言書の内容であることが少なくありません。
・誰に、どの財産を相続させるのかが明確か
・不動産や預貯金などの財産が正確に特定されているか
・誤解を招く表現になっていないか
このような点が曖昧であれば、押印の有無にかかわらず手続きが円滑に進まない可能性があります。
遺言書は一度作成すれば終わりではなく、ご本人の死後にご家族がその内容に基づいて手続きを行うものです。
だからこそ、形式だけでなく内容まで含めて分かりやすく作成することが重要です。
まとめ
自筆証書遺言の押印要件の見直しは、遺言制度を利用しやすくするという点で意義のある法改正です。
もっとも、押印が不要となったとしても、押印する意味がなくなるわけではありません。
当事務所では、将来の紛争予防および安心という観点から、法改正後も引き続き押印をおすすめしています。
※本記事は2026年7月時点の法令および改正法の内容を前提に作成しています。
自筆証書遺言の押印要件の見直しを含む民法改正は、2026年6月24日に公布されました。
施行日は「公布の日から1年以内に政令で定める日」とされており、現時点では未定です。
遺言書を作成する際は、その時点の法令に従って作成してください。不明な点は専門家へご相談ください。