最近、銀行の窓口やパンフレットで「家族信託」という言葉を見かける機会が増えました。
「銀行が勧めるなら安心だろう。」
「家族信託だから、子どもが財産を管理する制度なんだろう。」
このように考えて相談へ行く方も少なくありません。
しかし、銀行で案内される「家族信託」は、司法書士などが組成をサポートする家族信託(民事信託)とは、必ずしも同じ仕組みではありません。
実際には、銀行が扱う「家族信託」には大きく分けて二つのタイプがあります。
- 商品タイプ…銀行や信託会社が受託者となり、財産を管理する金融商品
- サポートタイプ…家族が受託者となる民事信託について、銀行が相談窓口や信託口口座の開設支援などを行うもの
※この記事では、分かりやすく説明するため、このように表現しています。
費用や仕組みの違いを知るうえで注意したいのは、前者の「商品タイプ」です。この記事では、この商品タイプを中心に解説します。
「家族信託」と聞いたのに、受託者は家族ではなく銀行?
家族信託(民事信託)の特徴は、親の財産を子どもなどの家族が管理できることです。
一方、銀行の「商品タイプ」では、受託者となるのは銀行や信託会社です。
つまり、同じ「家族信託」という言葉を使っていても、
- 家族が財産を管理する仕組み
- 金融機関へ財産管理を任せる仕組み
という大きな違いがあります。
どちらが優れているという話ではありません。
しかし、「家族が管理できる制度だと思って契約したら、実際には銀行へ管理を委ねる商品だった」という認識違いは避けたいところです。
契約時の費用だけで判断すると失敗することがあります
銀行が受託者となる商品では、契約時の費用だけでなく、契約期間中に管理報酬などが発生する商品があります。
契約期間が10年、20年と続けば、契約時には見えにくかった費用が積み重なり、最終的な負担額が想像以上になることもあります。
一方、家族信託(民事信託)は、家族が受託者となるため、金融機関へ継続的な管理報酬を支払うことを前提とした制度ではありません。
もちろん、どちらが適しているかはご家庭によって異なります。
大切なのは、「契約時にいくらかかるか」だけではなく、「契約終了までに総額いくらかかるのか」という視点で比較することです。
不動産まで考えているなら、さらに違いが出ます
認知症対策では、「預貯金が使えるか」だけでなく、「自宅を売却できるか」「賃貸不動産を管理できるか」といった問題も重要になります。
家族信託(民事信託)では、契約内容によっては受託者が不動産の管理や売却を行うことができます。
一方、銀行の商品は、対象となる財産や権限が商品ごとに定められています。
そのため、
「預貯金だけ管理できれば十分」
という方には適していても、
「将来は実家を売却する可能性がある」
「収益不動産の管理まで考えたい」
という場合には、目的に合わないこともあります。
「銀行だから安心」ではなく、「目的に合っているか」で選ぶ
銀行の商品には、金融機関が財産管理を担うという安心感があります。
一方、家族信託(民事信託)は、家族構成や財産の内容、将来の相続まで見据えて契約内容を設計できる柔軟さがあります。
重要なのは、「銀行の商品だから安心」「民事信託だから正しい」と考えることではありません。
自分たちは何を実現したいのか。
その目的に合った制度を選ぶことが何より大切です。
銀行で「家族信託」を勧められたら確認したい4つのこと
契約前には、少なくとも次の4点は確認しておきましょう。
- 銀行が受託者となる商品なのか、それとも民事信託のサポートなのか。
- 初期費用だけでなく、契約期間中に継続的な費用が発生するのか。
- 信託できる財産は預貯金だけなのか。不動産なども対象になるのか。
- 将来、自宅の売却や資産の組み替えが必要になった場合にも対応できる内容なのか。
「家族信託」という名前だけでは、これらは分かりません。
パンフレットや説明をよく確認し、疑問点は契約前に解消しておくことが大切です。
まとめ
銀行の商品が悪いというわけではありません。
家族に負担をかけたくない方や、金融機関へ財産管理を任せたい方には、適した商品もあります。
一方で、「家族信託」という言葉だけで判断すると、自分たちが考えていた制度とは全く違う契約だった、ということもあり得ます。
大切なのは、「銀行の商品か」「民事信託か」という二択ではありません。
ご家族が何を実現したいのかを明確にし、その目的に合った制度を選ぶことです。
契約は一度締結すると、長期間にわたり影響することがあります。銀行で「家族信託」を勧められた際は、その場で契約を決めるのではなく、一度内容を整理し、本当に目的に合った仕組みなのかを確認してから判断することをおすすめします。